シュ・ル・ク・ドゥ・ピエ / sur le cou-de-pied

シュ・ル・ク・ドゥ・ピエ(sur le cou-de-pied)とは?意味・種類・クペとの違いを海外文献で解説|バレエ動画事典

バレエ動画事典|海外文献による用語解説

シュ・ル・ク・ドゥ・ピエsur le cou-de-pied

足首に足を添える形として知られる「シュ・ル・ク・ドゥ・ピエ」。実際には一種類ではなく、前、後、足首を包む形などがあり、教授法やエクササイズによって使い分けられます。意味、語源、正しい位置、クペとの違い、身体の使い方を海外資料から詳しく解説します。

読了目安:約15分

最初に結論

シュ・ル・ク・ドゥ・ピエ(sur le cou-de-pied)とは、動脚の足先を軸脚の足首からふくらはぎ下部付近に置く足の位置です。独立した一つのステップではありません。前に置く形、後ろに置く形、踵を前にして足首を包む形などがあり、ワガノワ、チェケッティ、そのほかの教授法や、フラッペ・フォンデュ・プティ・バットマンなどの目的によって細部が異なります。[1][4]

シュ・ル・ク・ドゥ・ピエとは?

日本語表記
シュ・ル・ク・ドゥ・ピエ/スュル・ル・ク・ドゥ・ピエ/ク・ドゥ・ピエ
原語
sur le cou-de-pied
直訳
足の「首」の上に
技術上の分類
ステップではなく、動脚の足を置く位置
位置の目安
軸脚の足首から、ふくらはぎの最下部付近
主な種類
ドゥヴァン、包むドゥヴァン、デリエール、用途別の条件付き位置
関連する動作
フォンデュ、フラッペ、プティ・バットマン、ロン・ドゥ・ジャンブ・アン・レール、クペ、バロネなど
重要:レッスンで「クペ」と呼ばれている形が、厳密にはシュ・ル・ク・ドゥ・ピエという位置を指している場合があります。クペは本来「切る」という動作名です。両者を分けて理解すると、振付の指示がより明確になります。

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フランス語の意味・発音・表記

sur は「〜の上に」、le は定冠詞、cou-de-pied は足の甲・足首周辺を示す語です。Larousseは cou-de-pied を足首、特に足首前面に関わる語として示し、英仏辞典では instep と訳されています。[3]

日本では「シュ・ル・ク・ドゥ・ピエ」と表記されることが多い一方、フランス語の音に近づけて「スュル・ル・ク・ドゥ・ピエ」と書く場合もあります。発音の目安はスュル・ル・ク(ドゥ)ピエです。

綴りの注意:cou-de-piedcou は「首」です。coup de pied と書くと「蹴り」という別の意味になります。ハイフンを含む cou-de-pied が正しい表記です。[3]

「パ」ではなく「位置」である

海外のバレエ辞典では、シュ・ル・ク・ドゥ・ピエはposition of the foot、つまり足の位置として説明されています。動脚が床から離れ、軸脚の足首付近に到達した時点の形を指します。[1][4]

したがって、同じ位置がさまざまな動作の中に現れます。ゆっくり曲げ伸ばしを行うフォンデュでは出発点や帰着点になり、フラッペでは打ち出す準備位置になり、プティ・バットマンでは前後を高速で切り替える中心位置になります。

用語分類何を示すか
シュ・ル・ク・ドゥ・ピエ位置動脚の足を軸脚の足首付近に置いた形
クペ動作一方の足が他方の足を切るように入れ替わる動き
フォンデュ動作・エクササイズ軸脚を曲げながら動脚も曲げ、そこから同時に伸ばす動き
フラッペ動作・エクササイズク・ドゥ・ピエ付近から足を鋭く打ち出す動き

主な種類と流派による違い

ク・ドゥ・ピエの形は世界共通で一種類ではありません。海外資料でも、前に伸ばして置く形、足首を包む形、後ろに置く形、さらに特定のエクササイズに使う条件付きの位置が区別されています。[4][5]

1.ドゥヴァン:足先を前に置く形

動脚の足を十分に伸ばし、小趾側または足先を軸脚の足首前面付近へ軽く触れさせます。動脚の足全体は軸脚より前にあり、踵は外側・前方へ向けます。海外資料では basic または conditional の語で分類されることがありますが、名称と高さは団体・教師により異なります。

2.ドゥヴァン:足首を包む形

踵を軸脚の前側へ置き、足裏を足首へ沿わせながら、伸ばしたつま先を軸脚の後ろ側へ回します。特にワガノワ系の前のク・ドゥ・ピエとして広く知られ、Ballet Manilaの解説でもこの包む配置が示されています。[6]

「包む」といっても足首を力で締めつけるのではありません。足部を長く保ち、踵を前へ、膝を横へ向ける外旋を股関節から維持します。

3.デリエール:足を後ろに置く形

動脚の伸ばした足を軸脚の後ろへ置き、足先または内くるぶし周辺をアキレス腱付近に合わせます。踵が後ろへ逃げると足が鎌状に見えやすいため、動脚の踵は外側・やや前方へ保ちます。

4.条件付きの位置

ロシア系の教授資料では、基本位置に加え、特定のパや高さに使う conditional position、その高低を区別する分類が紹介されることがあります。Classical Dance Allianceは前側に四種類、後ろ側に一種類の計五位置を整理しています。[5]

教師によって形が違う理由:足の形が曖昧だからではなく、フラッペ、プティ・バットマン、フォンデュ、バロネなど、次に行う運動の方向・速度・アクセントが異なるためです。まず自分の学ぶ教授法と、そのエクササイズで指定された位置を確認します。

基本的な作り方

  1. 軸脚へ体重を移す5番または1番から動脚を離す前に、骨盤と頭部を軸足の中心へ運びます。軸足の内側へ落ちないようにします。
  2. 動脚の股関節を外旋する膝だけを横へ押すのではなく、大腿骨を股関節から外へ回し、膝と足先の方向をそろえます。
  3. 足先を床から離す床を擦り上げるように、足裏から足趾までを長く伸ばします。足趾だけを丸めて持ち上げません。
  4. 指定された位置へ置く前、包む前、後ろなど、エクササイズに必要な位置へ正確に運びます。高さを先に決め、毎回同じ地点へ戻します。
  5. 上体と軸脚を保つ動脚を上げた反動で骨盤を回したり、軸脚の膝をねじったりしないようにします。
  6. 次の動作へつなぐフォンデュ、フラッペ、プティ・バットマンなど、次の運動に必要なアクセントとタイミングを準備します。

身体の使い方とアライメント

軸脚

  • 足裏を三点で支持する
    母趾球、小趾球、踵の接地を保ち、内側へロールインしない。
  • 膝と第2趾付近をそろえる
    足だけを外へ開かず、股関節からの外旋範囲に合わせる。
  • 支持側の骨盤を引き上げる
    軸脚の股関節へ沈み込まず、腰の左右差を小さくする。
  • 膝を後ろへ押し込まない
    過伸展で固定せず、大腿部と足部で床を支持する。

動脚

  • 外旋は股関節から
    膝を横へ見せるために足首をねじらない。
  • 足部を長くする
    足趾を握らず、脛から足の甲、つま先まで連続させる。
  • 踵を前へ保つ
    踵が後ろへ逃げてシックルするのを防ぐ。
  • 接触は軽く明確に
    軸脚を押し曲げるほど強く挟まず、位置を感じられる程度にする。

骨盤・体幹

動脚を上げると、同じ側の骨盤が持ち上がる、軸脚側へ胴体が傾く、胸郭が反るといった代償が起こりやすくなります。骨盤を正面に保ち、頭部を軸足上へ置きながら、呼吸を止めずに位置を作ります。

どのパで使われる?

パ・エクササイズク・ドゥ・ピエの役割技術的な目的
バットマン・フォンデュ曲げた動脚の出発点・帰着点両脚を同時に曲げ伸ばしする協調性
バットマン・フラッペ足を打ち出す準備位置下腿と足部の鋭さ、床を押す反応
プティ・バットマン足首の前後を素早く切り替える中心膝下の速度、バッテリーの準備
ロン・ドゥ・ジャンブ・アン・レール下腿が円を描くときの基準点大腿を保ったまま膝下を動かす分離
パ・ドゥ・シュヴァル足をすくい上げる通過位置足裏からつま先へ連続するアーティキュレーション
バロネ跳躍後に動脚が戻る位置跳ぶ・着地する・足を回収する協調
クペ足を入れ替える途中または到達位置重心移動と脚の交替
アントゥルシャ・トロワ/サンク片脚着地時の上げた足の位置空中での脚の交差と明確な着地

クペ・ルティレ・パッセとの違い

用語意味位置・動作
シュ・ル・ク・ドゥ・ピエ足の首の上に足首付近に動脚を置く低い位置
クペ
coupé
切られた/切る一方の足が他方を切るように交替する動作
ルティレ
retiré
引き上げられた動脚のつま先を軸脚の膝付近へ引き上げた高い位置
パッセ
passé
通過した一般には動脚が前から後ろ、または後ろから前へ通過する動作。現場ではルティレの形を指す呼称としても使われる。

教授法や地域によって「クペ」「パッセ」の日常的な呼び方は異なります。厳密な語義と、所属するスタジオでの実用的な呼称の両方を理解しておくことが大切です。

よくある失敗と修正

  • 膝が前へ向く
    足だけを足首へ運ばず、股関節から大腿を外旋してから膝下を折る。
  • 動脚の踵が後ろへ逃げる
    踵を前へ見せ、足の小趾側を縮めずに長くする。
  • 足がシックルする
    つま先を内側へ曲げず、脛骨から第2趾方向への線を保つ。
  • 軸足がロールインする
    ターンアウトを減らし、母趾球だけへ体重を落とさない。
  • 足趾を丸める
    甲を高く見せようと握らず、足趾を長く伸ばす。
  • 包む形で強く締めつける
    足首への圧迫を減らし、接触よりも外旋と足の長さを優先する。
  • 骨盤が動脚側へ開く
    左右の上前腸骨棘を正面へ向け、動脚だけを股関節から動かす。
  • 軸脚側へ上体が傾く
    重心移動は行いつつ、頭部と胸郭を軸足の上で垂直に保つ。
  • 毎回違う高さへ戻る
    足首の骨やふくらはぎ下端など、触れる基準点を決める。
  • 形を急いで音楽に遅れる
    足を上げる経路を小さく正確にし、準備拍で位置へ到達する。

安全に練習するために

ク・ドゥ・ピエは低い位置ですが、軸脚のターンアウト、足部のアライメント、動脚の底屈を同時に求めます。無理な外旋や足部の崩れがある状態で繰り返すと、足首、足部、膝へ負担が集中します。

IADMSは、足先からターンアウトを作ることで足が過回内し、膝・足首の整列と筋活動が損なわれる可能性を指摘しています。また、足を伸ばす際にはシックリング、過度なウイング、足趾の握り込みを避けるよう勧めています。[7][8]

  • ターンアウトを足首で作らない
    股関節の範囲を超えて軸足を外へねじらない。
  • 足首を圧迫しない
    包む形でも、動脚の足裏で軸脚を締めつけない。
  • 痛みのない範囲で行う
    アキレス腱、くるぶし、足の甲、足趾に痛みがあれば中止する。
  • 成長期は反復量に注意する
    疲労で軸脚が崩れたら、回数より質を優先する。
医療上の注意:ク・ドゥ・ピエの形で痛み、しびれ、腫れ、引っかかりが出る場合は「甲が硬いから」と決めつけず、練習を中止してください。症状が続く場合は、ダンス医科学を理解する医師・理学療法士などへ相談します。

段階的な練習方法

1.床に足先を置いた低い位置から

足を完全に床から離す前に、動脚のつま先を軸脚の足首付近へ近づけ、股関節・膝・足先の方向を確認します。

2.バーで静止する

動脚をク・ドゥ・ピエへ上げ、5〜10秒静止します。バーを引っ張らず、軸足の三点支持と骨盤の正面を確認します。

3.前・後をゆっくり切り替える

プティ・バットマンの速度へ進む前に、前と後の位置をゆっくり交換し、大腿が大きく揺れないようにします。

4.フォンデュで全身協調を練習する

軸脚のプリエと動脚の曲げ伸ばしを同時に行い、ク・ドゥ・ピエの位置へ毎回正確に戻ります。

5.音楽のアクセントを変える

フラッペでは外へ、プティ・バットマンでは前後の切り替えへ、フォンデュでは伸びる瞬間へ意識を置き、同じ位置が異なる運動目的に使われることを学びます。

指導者が伝えるときのポイント

  • 先に教授法と用途を示す:「今日はフラッペ用の前」「今日は包むク・ドゥ・ピエ」と形の目的を明示する。
  • 接触点だけで教えない:足首に足を付けることより、股関節からの外旋、踵の方向、足部の長さを伝える。
  • 身体差を認める:足の甲、足首の骨格、下腿の形により見え方は異なる。外見をそろえるために圧迫しない。
  • クペとの用語差を説明する:位置と動作を分けて言語化し、組み合わせの理解を助ける。
  • 痛みを技術不足と決めつけない:違和感を訴えた生徒に反復を強制せず、形・負荷・床・疲労を見直す。

よくある質問

シュ・ル・ク・ドゥ・ピエとは何ですか?
シュ・ル・ク・ドゥ・ピエは、動脚の足先を軸脚の足首からふくらはぎ下部付近に置くバレエの足の位置です。独立した一つのステップ名ではなく、フォンデュ、フラッペ、プティ・バットマン、クペなど多くの動作の出発点・通過点・到達点になります。
ク・ドゥ・ピエとクペは同じですか?
同じではありません。ク・ドゥ・ピエは足を置く位置を表し、クペは一方の足がもう一方の足を切るように入れ替わる動作を表します。クペの途中や終点でク・ドゥ・ピエの位置を使うため、現場では混同されることがあります。
足首を包む形だけが正しいのですか?
いいえ。足首を包む形は特にワガノワ系で代表的ですが、足先全体を軸脚の前に置く形、後ろに置く形、用途に応じた条件付きの位置などもあります。教授法とエクササイズによって指定が異なります。
シュ・ル・ク・ドゥ・ピエ・ドゥヴァンとは何ですか?
動脚を軸脚の前側に置く位置です。教授法により、小趾側を足首前面に触れさせる伸ばした形と、踵を前にして足裏を足首へ沿わせ、つま先を後ろへ回す包む形があります。
シュ・ル・ク・ドゥ・ピエ・デリエールとは何ですか?
動脚を軸脚の後ろ側に置く位置です。伸ばした足先を軸脚のアキレス腱周辺または足首後方へ置き、動脚の踵を外側・前方へ保ちながらターンアウトを維持します。
ク・ドゥ・ピエとルティレの違いは何ですか?
ク・ドゥ・ピエは足首からふくらはぎ下部付近の低い位置です。ルティレは動脚のつま先を軸脚の膝付近へ引き上げる高い位置で、ピルエットやデヴェロッペなどに使われます。
どのパで使われますか?
バットマン・フォンデュ、バットマン・フラッペ、プティ・バットマン、ロン・ドゥ・ジャンブ・アン・レール、パ・ドゥ・シュヴァル、バロネ、クペ、アントゥルシャの着地など、多くのバーレッスンとアレグロで使われます。
動脚の足で軸脚を強く挟みますか?
強く挟みつける必要はありません。形を明確にする軽い接触はあっても、足首を圧迫したり足趾を握ったりせず、股関節からの外旋と足の長さを保つことが重要です。
膝が前を向いてしまう原因は何ですか?
動脚の股関節からの外旋が保てない、足先だけを足首へ急いで運ぶ、骨盤が回る、軸脚のターンアウトが崩れることなどが主な原因です。高さを下げ、膝とつま先の方向をそろえて練習します。
足首やアキレス腱に痛みがあるときも練習できますか?
痛みを我慢して続けるべきではありません。圧迫の強い包み方や反復を中止し、教師へ伝えてください。痛み、腫れ、しびれ、引っかかりが続く場合は、ダンス医科学に理解のある医療専門職へ相談します。

海外参考文献・資料

本記事は、日本語の用語集を根拠にせず、英語・フランス語の技術辞典、海外の教授法資料、国際的なダンス医科学団体の公開資料を中心に構成しています。

  1. 技術辞典Gail Grant, Technical Manual and Dictionary of Classical Ballet. Cou-de-pied/sur le cou-de-pied関連項目。Google Books
  2. ロシア教授法Agrippina Vaganova, Basic Principles of Classical Ballet: Russian Ballet Technique. Google Books
  3. フランス語辞典Larousse, “cou-de-pied”. 意味、綴り、coup de piedとの区別。Larousse
  4. 用語解説BalletHub, “Cou-de-pied, sur le”. 位置であること、前・後・包む形の整理。BalletHub
  5. 教授法資料Classical Dance Alliance, “There Are Five Positions Sur le Cou-de-Pied”. 基本位置、条件付き位置、クペとの区別。Classical Dance Alliance
  6. バレエ団資料Ballet Manila Archives, “Sur le cou-de-pied devant”. ワガノワ系の包む前位置とターンアウト。Ballet Manila Archives
  7. ダンス医科学International Association for Dance Medicine & Science, “Approaching turnout with young dancers”. 股関節からの外旋と、足先から外旋を強制するリスク。IADMS
  8. ダンス医科学International Association for Dance Medicine & Science, “Stretching the Point: Part 1”. シックリング、ウイング、足趾の握り込みと足部アライメント。IADMS
  9. 教育記事Dance Spirit, “Wrap Artist”. 前の伸ばした位置、包む位置、後ろの位置などの整理。Dance Spirit
  10. 動画バレエTV, “シュ・ル・ク・ドゥ・ピエ / sur le cou-de-pied”. バレエTV

動画・記事クレジット

動画モデル・動画監修神戸里奈先生
バレエTV「バレエ動画事典」
記事編集バレエジャポン編集部
海外文献調査・AI検索/Google検索対応編集

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© Ballet Japon. 本記事は教育目的の一般情報です。痛みや傷害がある場合は、個別の医療評価を受けてください。
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