建部弘子先生|指導者の「想い」をシェアするコラム

学びをすぐに現場へ。バレエを人生の豊かさへつなぐ|建部弘子先生
バレエ安全指導者資格®︎ コラム

学びをすぐに現場へ。
バレエを人生の豊かさへつなぐ建部 弘子先生|バレエスタジオFUCHSIA

怪我の経験も、新しく得た知識も、そのままにしない。一度自分の中で考え、すぐに目の前の生徒へ還元していく。建部弘子先生のレポートから見えてくるのは、学び続け、指導を更新し続ける実践型の教育者の姿です。

読了目安:約7分修了生紹介執筆:バレエ安全指導者資格®︎事務局

「バレエは人生を彩るツールのひとつ」。建部弘子先生の提出レポートを読み重ねていくと、この言葉が、建部先生のバレエ観をとてもよく表しているように感じます。

上達することだけではなく、怪我をせずに踊り続けること。音楽を感じ、表現すること。仲間と関わること。集中する力や粘り強さを育てること。そして、バレエ以外の世界にも目を向け、自分の人生を自分で歩いていくこと。

建部先生が見つめているのは、レッスンの中の「できた・できなかった」だけではありません。

その人の人生の中に、バレエがどんな豊かさを残すことができるのか。そこまでを含めて、バレエを教えていらっしゃる先生です。

このシリーズでは、バレエ安全指導者資格®︎で学ばれた先生方が、何を大切にし、どのように指導を更新しているのかをご紹介しています。今回は、ベーシック講座からプロフェッショナル講座へと学びを重ねてこられた建部弘子先生。継続して提出いただいたレポートをもとに、安全、身体、心理、芸術、教育、人生という視点から、その指導者像をたどります。
LEARNING INTO PRACTICE

学んだら、すぐに生徒の顔が浮かぶ

建部先生のレポートには、一つ、とても印象的な特徴があります。

新しい知識に触れると、そこで終わりません。「生徒に伝えたい」「レッスンでやってみたい」「この子に使えるかもしれない」と、ほとんど必ず実際の指導へ話が進んでいきます。

解剖学を学べば、身体のつくりが違う生徒への伝え方を考える。プレトウシューズを知れば、子どもたちが安全にポワントへ進む段階づくりを考える。ポイントワークを学べば、必要以上に身体へ触れずに位置や方向を伝える方法を考える。音楽を学べば、振付だけではなく音の取り方までレッスンへ持ち帰る。

建部先生にとって、「学ぶこと」と「教えること」は離れていません。

学んだことを、自分の中にしまっておかない。
一度考えて、次のレッスンへ持って帰る。

知識を集めることそのものが目的なのではなく、「これを目の前の生徒のためにどう使えるだろう」と考える。その実践への速さが、建部先生の大きな魅力です。

お名前
建部 弘子
スタジオ
バレエスタジオFUCHSIA
学び
ベーシック講座/プロフェッショナル講座
指導の軸
安全・楽しさ・芸術性・自立
関心領域
身体科学/心理/音楽/メソッド/キャリア
広がる学び
クラシック/コンテンポラリー/キャラクターダンス
EXPERIENCE BECOMES SAFETY

自分の怪我を、次の生徒の安全へ変える

建部先生の安全指導への思いには、ご自身の身体経験が深く関係しています。

左右両方の前十字靱帯を損傷し、手術を経験したこと。最初の怪我では適切な診断へたどり着くまで時間がかかり、その後のバレエ人生にも大きな影響を受けたこと。

だからこそ、怪我について学ぶとき、建部先生は医学知識として聞くだけではありません。「自分のときはどうだったか」「同じことを生徒に起こさないためには何を見るべきか」「痛みが出たときに指導者はどう動くべきか」と、自身の経験と結びつけて考えます。

「上手い」だけでは測れない力

建部先生は以前、「うまい下手より、今まで怪我をしたことがない人こそすごい能力がある」と書かれていました。

高く脚が上がること、たくさん回れること、大きく跳べることだけではなく、身体を守りながら長く踊り続けられることにも価値がある。その実感は、ご自身の経験から生まれています。

過去の経験を悔やむだけではなく、「自分が経験したからこそ、次の人には同じ思いをさせない」へ変えていく。

建部先生の安全への意識には、知識だけではない説得力があります。

KEEP UPDATING

経験があるからこそ、「まだ知らない」を大切にする

長く踊り、長く指導をしていると、自分なりの方法は少しずつ固まっていきます。

それでも建部先生のレポートには、「難しかった」「まだ分からない」「もっと知りたい」「また考えてみたい」「レッスンを見直したい」という言葉が繰り返し現れます。

循環器、筋肉、発達、ハラスメント、婦人科、音楽、バレエ史、チェケッティ、ポイントワーク。専門領域が変わっても、知らなかったことに出会うことを楽しみ、自分の指導を更新する材料として受け取っています。

世の中の変化も早い。
バレエの考え方も、常にアップデートしていく必要がある。建部弘子先生の受講レポートより

新しく学んだからといって、それまでの教育観をすべて捨てるわけではありません。

「怪我をさせない」「楽しく続けてほしい」「一人ひとりを大切にしたい」という中心は変わらない。その一方で、そこへ向かう方法は、学ぶたびに柔軟に変えていく。

大切にするものは変えず、やり方は更新し続ける。そこに、建部先生らしい学び方があります。

FINDING WORDS THAT REACH

「正しい言葉」より、その人に届く言葉を探す

建部先生が何度も書かれているテーマの一つが、「言葉のチョイス」です。

「引き上げる」「床を押す」「伸ばす」「張る」。身体の中で起こしてほしいことは似ていても、どの言葉で感覚がつながるかは、生徒によって違います。

だから建部先生は、一度伝えて終わりにはしません。言い換える。見せる。他の人の動きを一緒に見る。もう一度伝える。できたときには、しっかりとその変化を認める。

伝わらなかったら、教師の引き出しを変える

同じ説明を繰り返すだけではなく、アプローチそのものを変えていく。建部先生にとって指導は、「言ったから終わり」ではなく、「どうしたらこの人に届くか」を考え続ける仕事です。

子どもにも、大人にも、その人なりの受け取り方があります。

一つの正しい説明を全員へ当てはめるのではなく、目の前の人に届く表現を探す。その姿勢が、建部先生の指導の細やかさにつながっています。

A SMALL COMMUNITY

スタジオを、「小さな社会」にしていく

建部先生が大切にしているのは、教師と生徒の一対一の関係だけではありません。

年上の生徒が小さい子のお世話をする。年齢の違う子どもたちが関わる。同じバレエを好きな仲間として練習し、舞台を経験し、一緒に過ごす。

建部先生は、そこに「縦と横の社会ができる」と表現されています。

まずは、上手い下手よりも、みんなが楽しいこと。建部弘子先生の受講レポートより

バレエ教室は、ステップを覚えるだけの場所ではありません。

思いやり、協調性、友情、集中する力、頑張り続ける力。年齢の違う人と関わり、自分の役割を持つこと。

建部先生は、そうした人としての成長も含めて、バレエ教育を見ています。

OPEN TO DIFFERENT STYLES

一つの正解に閉じない。違いを知って、自分の基準を持つ

建部先生自身、さまざまなスタイルや教師から学び続けています。

アメリカのバレエ、バランシン、ワガノワ、チェケッティ。さらにコンテンポラリーやキャラクターダンスへも学びを広げています。

先生によって足の出し方も、顔のつけ方も、身体の使い方も違う。その違いを実際に経験しているからこそ、「先生によって言うことが違う=どちらかが間違っている」と単純には捉えません。

背景にあるスタイルや考え方を理解し、その上で目の前の生徒に何が必要なのかを考える。

違いを知ることは、迷うためではなく、選べるようになるため。
建部先生の学び方には、伝統やメソッドへの敬意と、それを現場に合わせて考え直す柔軟さが共存しています。

最終的に建部先生が何度も戻ってくる基準は、安全であること。そして、その人がバレエを楽しめることです。

BALLET AND A WIDER LIFE

バレエだけの人生にしない。それも、バレエ教育の一部

建部先生は、ご自身もバレエだけではなく、別の仕事や事業を経験しながら人生を歩んでこられました。

だからこそ若い人たちにも、一つのことへ打ち込むことを大切にしながら、それだけに世界を閉じないでほしいと考えています。

社会を知ること。さまざまな経験をすること。人と関わること。自分で考え、自立して生きていくこと。

バレエを通して学んだことは、人生の宝になる。
バレエをしながら、いろいろなことにもチャレンジしてほしい。建部弘子先生の受講レポートより

バレエを続けることと、人生を広げることは矛盾しません。

さまざまな経験をした人だからこそ、踊りにも、人への接し方にも、考え方にも深みが生まれることがあります。

「バレエのために人生をつくる」のではなく、「人生を豊かにするものの一つとしてバレエがある」。

建部先生の教育観には、そんな広がりがあります。

LEAVE A GOOD MEMORY OF BALLET

生徒がバレエを辞めても、バレエは好きでいられるように

建部先生の言葉の中で、特に印象的なものがあります。

生徒がバレエをやめても、
バレエは好きでおれるような指導者になりたい。建部弘子先生の受講レポートより

すべての生徒がプロになるわけではありません。ずっと同じ教室へ通い続けるわけでもありません。

受験、進学、仕事、結婚、子育て、怪我、加齢。人生の変化によって、バレエとの距離が変わることがあります。

それでも、音楽を聴いたときに舞台を思い出す。身体を動かしたくなったときに、またバレエを始めてみる。自分の子どもと一緒に舞台を観る。

人生のどこかに、バレエが良い記憶として残っている。

それもまた、バレエ教育が人に残すことのできる大切な成果なのではないでしょうか。

WHAT SHE IS REALLY GROWING

建部先生が育てようとしているもの

建部先生、ベーシック講座、そしてプロフェッショナル講座を通して、毎回の学びをご自身の経験や生徒さんの姿と照らし合わせながら、たくさんの言葉を届けてくださりありがとうございました。

レポートを読み続けていると、「安全な指導をする先生」という言葉だけでは表しきれない姿が見えてきます。

怪我をしない身体を育てる。

音楽を感じる心を育てる。

仲間を思いやる気持ちを育てる。

できないことにも粘り強く向き合う力を育てる。

自分とは違う考え方や文化を知る。

そして、バレエだけに閉じることなく、自分自身の人生を歩いていく。

「バレエって楽しい」という気持ちを、
その人の人生にできるだけ長く残していく。

建部先生が教えているのは、バレエのステップだけではありません。

バレエを通して、自分の身体を大切にし、人と関わり、さまざまな世界を知り、自分自身の人生を豊かにしていくこと。

過去の経験を学びに変え、新しく学んだことをまた現場へ持ち帰り、昨日より少し良い指導を目指して更新し続ける。

その積み重ねこそが、建部弘子先生らしい教育者としての姿なのだと思います。

生徒一人ひとりの人生の中に、それぞれの形でバレエが残っていく。

建部先生がつくろうとしているのは、そんなバレエ教育なのではないでしょうか。

バレエ安全指導者資格®︎事務局

SAFE DANCE TEACHERS MAP

バレエ安全指導者資格 安全指導者MAP

各コースで学ばれた先生がいらっしゃる全国のスタジオを、お教室選びや相談先を探す際の参考にご覧いただけます。

※ピンをクリックすると、学ばれた先生のお名前やスタジオが表示されます。

執筆:バレエ安全指導者資格®︎事務局

提出レポートとインタビュー内容をもとに、学び続ける先生方の歩みと、それぞれの指導に込められた願いをご紹介しています。

NEXT STEP

経験だけに頼らず、学び続けられる指導者へ

解剖学、整形外科学、栄養、女性の健康、心理、発達、音楽、歴史、指導法。バレエ安全指導者資格®︎では、バレエを一つの専門だけで捉えず、生徒の身体・心・生活を横断して考えるための学びを提供しています。

バレエ安全指導者資格
運営:Safe Dance Association(セーフダンスアソシエーション)
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