バレエコンクールにおける 個人情報と、未成年の権利について

バレエコンクールにおける個人情報と、未成年の権利について|バレエ安全指導者資格®
BALLET / CHILDREN / PRIVACY

バレエコンクールにおける
個人情報と、未成年の権利について 子どもたちに夢へ向かう機会を与えてくれるバレエコンクール。その発展の中で、今あらためて考えておきたいこと。

日本ほど、バレエコンクールが身近にあり、
子どもたちが数多く挑戦している国も、
そう多くはないのではないでしょうか。

全国各地でさまざまなコンクールが開催され、
舞台に立つ経験を得たり、
自分の力を試したり、
海外のバレエ学校やスカラシップにつながったり。

子どもたちに新しい世界と出会う機会をつくり、
夢へ向かう一歩を与えてくれるバレエコンクールが増えていくことは、
とても喜ばしいことだと思います。

コンクールをきっかけに、
それまで知らなかった先生や学校と出会い、
将来の進路が大きく開かれることもあります。

だからこの記事は、
バレエコンクールそのものを否定するためのものではありません。

むしろ、コンクールが大きくなり、
海外の学校やカンパニー、企業、スポンサー、メディアなど、
さまざまな人や組織が関わるようになってきた今だからこそ、
一度考えてみたいことがあります。

子どもたちがコンクールに参加するとき、
私たちはその子たちの「個人情報」を、
どこまで預かっているのでしょうか。


氏名や生年月日だけではありません。

所属スタジオ。
写真や動画。
場合によっては、身長や体重。
コンクールでの成績や進路に関する情報。

そして、それらの情報は誰が持ち、
誰に共有され、
何のために使われているのでしょうか。

子どもたちに夢を叶える機会を増やしていくこと。
そして、その子どもたちの権利や尊厳を守ること。

その二つは、どちらかを選ぶものではありません。

バレエコンクールがこれからさらに発展していくからこそ、
今回はあえて少し違った視点から、

「バレエコンクールにおける個人情報と、未成年の権利」

について、皆さんと一緒に考えてみたいと思います。

THE INFORMATION WE GIVE

私たちは、
何を渡しているのでしょう。

コンクールへの申し込みでは、 多くの情報を主催者へ提出します。

基本情報 氏名、生年月日、住所、連絡先
所属情報 スタジオ、教師、学校
身体情報 身長、体重など
写真・映像 プロフィール写真、演技映像
活動履歴 コンクール歴、受賞歴、成績
進路情報 留学、学校、スカラシップへの希望

大人であれば、 自分の意思でそれらを提供するという考え方もできるでしょう。

しかし、バレエコンクールには、 まだ自分の個人情報がどのような意味を持ち、 誰に渡り、 将来どのように使われる可能性があるのかを、 十分に理解することが難しい年齢の子どもたちも参加しています。

情報を安全に管理するだけではなく、
その情報を集めること自体が必要なのか。
そこから考える必要があります。

MORE THAN A COMPETITION

バレエコンクールは、
コンクールだけではなくなっている。

現在のバレエコンクールは、 単純に舞台上の踊りを審査し、 順位を決めるだけの場所ではなくなりつつあります。

海外バレエ学校のスカラシップ。
サマープログラムへの招待。
バレエ団へのオーディション。
企業スポンサー。
ダンス用品の販売。
写真や映像配信。
SNS。
地域イベント。
教育プログラム。

さまざまな機能が、 一つのイベントの中でつながり始めています。

これは決して悪いことではありません。

世界と出会う機会が増え、 より良い舞台や教育機会がつくられ、 企業からの支援によって新しい取り組みが生まれることもあります。

仕組みが大きくなるほど、
忘れてはいけないことがあります。

その中心にいる多くの参加者は、
まだ子どもです。

CHILDREN AS DATA

子どもは「参加者」であると同時に、
「データ」にもなっていく。

コンクールに申し込む。

プロフィールを登録する。

写真を提出する。

動画をアップロードする。

審査を受ける。

結果が記録される。

学校からオファーを受ける。

一つひとつは、 ごく普通の手続きに見えます。

しかし、それらが蓄積されれば、

誰が、何歳で、どこのスタジオに所属し、
どの程度のレベルにいて、
どのような進路に興味を持っているのか。

という情報になります。

さらに、同じ子どもが毎年参加すれば、 一人のダンサーの成長過程を長期間にわたって把握することも可能になります。

これは進路支援という意味では、 とても価値のある情報です。

一方で、 マーケティングやビジネスという視点から見れば、 非常に価値の高い情報にもなります。

「情報を持つことができる」ことと、
「その情報を利用してよい」ことは、
同じではありません。

BODY DATA

身体に関する情報は、
普通のプロフィールとは少し違います。

バレエには、 他の多くの習い事とは異なる特徴があります。

身体そのものが、 評価の対象になりやすいことです。

身長。
体重。
身体のライン。
柔軟性。
体型。
筋力。
発育状況。

これらは単なるプロフィールではありません。

特に思春期の子どもにとっては、 自分自身の身体をどう認識するかにも関わる情報です。

そして、その身体情報が、

学校選考。
スカラシップ。
コンクール。
スポンサー。
商品。
広告。

と結びついていく場合には、 さらに慎重である必要があります。

「あなたの身体は、
市場でどう評価されるのか。」

まだ成長途中にある子どもに、
その問いを必要以上に背負わせないこと。

身体に関する情報を扱うのであれば、
なぜ必要なのか。
誰が見るのか。
何に使うのか。
いつ削除するのか。

そこまで説明できる仕組みが必要です。
ONE PURPOSE, ONE CONSENT

大会参加と広告利用は、
別の同意で考える。

たとえば、 子どもの情報を扱う目的は、 次のように分けて考えることができます。

大会参加 申し込みや運営に必要な情報
審査 審査を実施するために必要な情報
進路・奨学金 学校やカンパニーへの情報提供
記録 大会写真・映像の保存
SNS・広報 ウェブサイトやSNSへの掲載
広告・マーケティング スポンサーや企業による利用

これらは、 すべて同じことではありません。

「大会に出たい」という子どもが、 「企業から広告を受け取りたい」と考えているとは限りません。

「海外学校にプロフィールを見てほしい」という保護者が、 「子どもの写真を商品広告にも使ってほしい」と考えているとも限りません。

参加するための同意。
進路のための同意。
写真・映像利用への同意。
広告への同意。

それぞれを分けて考える。

そして、 同意しないことによって、 審査や教育上の不利益を受けないことも大切です。

DO WE REALLY NEED IT?

「安全に管理する」の前に、
本当に必要なのかを考える。

個人情報について考えるとき、 「どう安全に管理するか」という話になりがちです。

もちろん、 安全な管理は必要です。

しかし、その前にもっと大切な問いがあります。

そもそも、
その情報は本当に必要でしょうか。

審査に体重は必要でしょうか。

住所はどこまで必要でしょうか。

子ども本人のメールアドレスを取得する必要はあるでしょうか。

スポンサー企業へ提供する必要はあるでしょうか。

大会終了後も保存する必要はあるでしょうか。

何年間保持する必要があるでしょうか。

情報は、 「あると便利だから」 という理由だけで集めるものではありません。

「その目的を達成するために、本当に必要なのか。」

特に未成年者については、 できるだけ集めないという考え方も、 大切になっていくでしょう。

PHOTO / VIDEO / DIGITAL FOOTPRINT

写真や動画も、
子どもの情報です。

バレエコンクールでは、 多くの写真や動画が撮影されます。

舞台写真。
表彰式。
バックステージ。
公式SNS。
ライブ配信。
プロモーション映像。
スポンサーコンテンツ。

一度インターネットに公開された映像は、 完全に回収することが難しくなります。

10歳のときの映像が、 20歳になっても検索できる可能性があります。

本人が将来、

「もう、この映像を公開されたくない。」

と思うこともあるでしょう。

子どもの頃に保護者が同意した公開について、 成長した本人が改めて意思を示せる仕組みも、 考えていく必要があります。

一度同意したから永久に使える、ではなく、

子どもが成長することを前提にした
情報管理へ。
DREAMS AND MARKETING

子どもの「夢」が、
マーケティングにつながるとき。

バレエコンクールに参加する子どもの多くは、

もっと上手になりたい。
海外で学びたい。
バレリーナになりたい。
舞台に立ちたい。

という、 とても純粋で強い願いを持っています。

だからこそ、 その願いは大きなマーケティング価値を持つことにもなります。

「トップダンサーが使っている」

「海外で活躍するために」

「選ばれるために」

「夢を叶えるために」

こうした言葉は、 大人に向けた広告以上に、 子どもや保護者へ強く届く可能性があります。

企業がバレエを支援することには、 大きな意義があります。

しかし、

子どもの不安や劣等感を利用して商品を売ることと、
子どもの成長を支援することは、
分けて考える必要があります。

特に、 身体、体重、容姿、才能についての不安を刺激するようなマーケティングには、 より高い倫理基準が必要ではないでしょうか。

BEING SEEN

「私は何が好きなのか」より先に、
「私はどう評価されるのか」にならないために。

コンクール、SNS、スポンサー、学校、企業がつながると、

より良いプロフィール写真。
多くの受賞歴。
有名な所属先。
SNSのフォロワー。
身体的な特徴。
ブランドとの関係。

といったものが、 一人のダンサーの価値と結びついて見えることがあります。

プロを目指す過程では、 自分を伝える力も必要です。

しかし、 まだ人格を形成している途中の子どもにとって、

「私は何が好きなのか」より先に、
「私は市場からどう評価されるのか」が
大きくなってしまわないこと。

そこには、 大人が意識してつくる余白が必要です。

WHO IS RESPONSIBLE?

誰が、
子どもを守るのでしょう。

コンクールが大きなプラットフォームになるほど、 関係する組織は増えていきます。

主催者 大会運営と参加者管理
スタジオ・教師 生徒の指導と進路
学校・カンパニー 選抜と進路
スポンサー 支援とマーケティング
撮影・配信事業者 写真・動画・ライブ配信
メディア・SNS 情報の公開と拡散

もし何か問題が起きたとき、

「それはスポンサーの問題です」

「撮影会社の問題です」

「スタジオと保護者の問題です」

と、 責任が分散してしまう可能性があります。

関係する企業や組織が増えるほど、
誰が最終的に子どもを守るのかを
明確にしておく必要があります。

CHILDREN’S RIGHTS

個人情報保護から、
子どもの権利へ。

ここで大切なのは、 「個人情報保護のルールに違反していないか」 だけではありません。

法律や規約を守っていても、 子どもにとって望ましくないことはあり得ます。

だからこそ、 もう一歩先に進んで、

子どもの権利という視点から、
仕組みを考える。

本人にも理解できる言葉で説明されること。

嫌だと言えること。

あとから意思を変えられること。

必要以上に身体情報を集められないこと。

広告と教育を区別できること。

情報を提供しないことで不利益を受けないこと。

困ったときに相談できること。
そして何より、

その子どもの将来にとって
何が最善なのかを優先すること。
BALLET AND BUSINESS

バレエの発展と、
子どもの権利は両立できる。

企業が参入すること。

コンクールが大きくなること。

世界の学校とつながること。

デジタル技術を使うこと。

これらを否定する必要はありません。

むしろバレエという文化が社会の中で広がり、 より多くの人や企業とつながっていくことには、 大きな可能性があります。

しかし、市場が大きくなるのであれば、
子どもを守る仕組みも、
同じだけ育てなければならない。

これまでバレエ界では、

教師が子どもをどう安全に指導するか。

怪我をどう防ぐか。

成長期の身体をどう扱うか。

といったことが、 少しずつ考えられるようになってきました。

これからは、 もう一段階進む必要があります。

教師だけではなく、

コンクール。
学校。
カンパニー。
企業。
スポンサー。
メディア。
プラットフォーム。

バレエに関わるすべての組織が、
未成年者をどのように扱うのか。

そこまで含めて、 「安全」を考える時代になっています。

BEFORE EVERYTHING ELSE

子どもは、
データではありません。

子どもは、 未来の顧客ではありません。

未来のスターでもありません。

企業の広告素材でもありません。

データでもありません。

その前に、

今を生きている、
一人の人です。

バレエの市場が大きくなっていくのであれば、 その成長の中心に置くべきものも、 改めて考えていく必要があります。

売上でもなく。

アクセス数でもなく。

参加者数でもなく。

子どもの尊厳と、
子どもの最善の利益を中心に。

バレエという文化が、 子どもの夢を支える場所であり続けるために。

バレエに関わる大人や組織一人ひとりが、 これから考えていきたいことなのではないでしょうか。

SAFE DANCE ASSOCIATION

「安全」を、
指導だけの問題にしないために。

バレエ安全指導者資格®では、 身体や怪我の予防だけではなく、 成長期への配慮、心理的安全、ハラスメント、 生徒・保護者との関係など、 バレエを学ぶ人を取り巻く環境全体について考えています。

バレエの世界が広がり、 より多くの企業や組織、サービスが関わるようになるからこそ、 「安全」という言葉の範囲も広げていく必要があります。

子どもを安全に教えることから、

子どもの権利を守りながら、
バレエという文化と市場を育てることへ。

私たちも、 これからのバレエに必要な安全について、 引き続き考えていきたいと思います。

バレエ安全指導者資格®について詳しく見る →

バレエ安全指導者資格®
運営: Safe Dance Association (セーフダンスアソシエーション)
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