学術と実践が交わり、日本のバレエの現在地と未来を考える一日
歴史研究、国内外のバレエ教育、映像比較、実演、クロストークが一つのプログラムとして結ばれました。中谷からは、日本のバレエ教育の現状、指導者を支える仕組み、医療・心理・栄養との連携、そして日本のバレエの次の100年についてお話ししました。
開講記念イベント『はじめてのバレエ学』
学習院大学の新たな舞踊・舞台芸術研究の学びを記念し、専門家と実演家が集いました。
開催概要
- 日時:2026年4月18日(土)14:00〜16:00
- 会場:学習院大学目白キャンパス
- 西5号館3階303教室
- 実演・トーク・クロストーク
- 主催:身体表象文化学専攻
登壇者
- 針山愛美氏|バレエダンサー・芸術監督
- 中谷広貴|セーフダンスアソシエーション代表
- 近藤つぐみ先生|演劇博物館助教
- 高橋由季子先生|学習院大学非常勤講師
世界のバレエ史から、日本の現在地を見つめる
バレエが国、社会、思想、文化と結びつきながら変化してきた流れを辿りました。
イタリア
宮廷文化の中で生まれたバレエの原点を見つめます。
フランス・ロシア
制度、技法、劇場文化の発展と古典作品の形成を辿ります。
バレエ・リュス
美術、音楽、振付が結びつき、20世紀の舞台芸術を更新した潮流を考えます。
イギリス・米国・日本
各地域での受容と、日本のバレエの礎となった三人のパブロワへつなぎます。
日本のバレエ教育の現状について
歴史の流れを受け、中谷からは「日本のバレエ教育の現状」についてお話ししました。自身のバレエ団での経験と、バレエ安全指導者資格®を通して全国の先生方と関わる中で見えてきた、現場の強さと課題を共有しました。
日本のバレエ教育には、子どもたちを大切に思い、長い時間をかけて教室文化を支えてきた先生方の力があります。その一方で、指導者を支える制度、継続的な学び直し、身体・心理・栄養に関する専門知との連携は、さらに整えていく必要があります。
経験を知識と検証によって、さらに強くする。
世界の教育環境を知ることで、日本の輪郭が見えてくる
針山愛美氏から、国内外での豊富な経験をもとに、世界のバレエ教育の実態が語られました。
制度の違い
学校、劇場、カンパニー、職業教育がどのように接続しているかを比較します。
教育観の違い
才能、身体、年齢、進路、指導者の役割に対する考え方の差を知ります。
日本の現在地
海外をそのまま正解とせず、日本に必要な仕組みを考えるための基準にします。
『瀕死の白鳥』を、映像と実演から感じる
同じ作品が、時代、身体、音楽、解釈によって全く異なる世界を立ち上げます。
アンナ・パブロワ
作品の歴史的原点と、身体から立ち上がる儚さを映像から辿りました。
マイヤ・プリセツカヤ
強い身体性とドラマ性、腕や背中がつくる独自の表現を見つめました。
ウリヤーナ・ロパートキナ
音楽との精緻な関係と、洗練された造形、静かな緊張感を比較しました。
イベントで交差した12の視点
歴史、教育、身体、研究、安全を別々に扱わず、互いの関係を考えました。
| テーマ | 一つの見方 | 立体的に見る視点 |
|---|---|---|
| バレエ史 | 作品と人物の年表 | 社会、思想、制度、国際交流との関係 |
| 技法 | 正しい型を学ぶ | 身体観と教育制度が形づくる方法 |
| 作品 | 同じ振付を再現する | 時代、身体、音楽によって解釈が変わる |
| ダンサー | 技術を披露する人 | 歴史と文化を身体で媒介する存在 |
| 指導者 | 経験を伝える人 | 経験を更新し、学び続ける専門職 |
| 教育 | 上達させること | 身体、心、人格、進路を含む環境づくり |
| 安全 | 怪我を防ぐこと | 身体・心理・制度・関係性を含む基盤 |
| 研究 | 実践から離れた理論 | 現場の問いを検証し共有可能な知へ変える |
| 海外比較 | 海外を正解とする | 差を知り、日本に合う仕組みを考える |
| 日本の課題 | 遅れていると評価する | 改善できる余白と可能性として捉える |
| 伝統 | 変えてはいけないもの | 核を守りながら、環境を更新するもの |
| 未来 | 自然に続いていくもの | 研究者、実践者、社会が共につくるもの |
課題があるからこそ、日本のバレエには可能性がある
世界の歴史や制度と比較すれば、日本には整備すべき点が多くあります。指導者教育、研究との接続、医療・心理・栄養との連携、ダンサーや指導者が長く活動できる環境づくり。課題は決して少なくありません。
しかし、仕組みが完成しきっていないからこそ、現場の声を反映し、新しい制度や学びの形をつくることができます。実践と研究、芸術と安全、伝統と現代の知見を、これからつなぎ直していけます。
「これからつくることができる」ということ。
踊ってきた人、教えてきた人が、研究の現場へ
実践者だからこそ見える問いを、研究によって社会へ還元できる知見へ育てます。
身体感覚
踊ってきた人だからこそ分かる感覚を、言葉と検証へつなぎます。
現場の課題
指導、生徒、保護者、進路、安全の中で生まれる問いを研究対象にします。
社会への還元
研究成果を教材、制度、指導法、相談体制へと戻していきます。
日本のバレエ環境を育てる10の課題
- 指導者が体系的に学べる教育制度
- 資格取得後も学び続けられる環境
- 医療・心理・栄養との日常的な連携
- 成長段階に合う指導と負荷設計
- 心理的安全性と人格の尊重
- 実践者が研究へ進める道筋
- 大学・研究機関と現場の協働
- ダンサーと指導者のキャリア支援
- 安全に相談できる第三者的な仕組み
- 日本独自のバレエ文化を未来へ伝える基盤
日本のバレエの次の100年へ
バレエは、過去から受け継がれてきた大切な芸術です。同時に、これからを生きる子ども、ダンサー、指導者、保護者、研究者、社会とともに、未来へ向けて育てていく芸術でもあります。
現場の先生方の声を大切にすること。医療、心理、栄養、教育、芸術研究とつながること。安全に学び、安心して踊り、長くバレエと関われる環境をつくること。そのすべてが、日本のバレエの未来につながっています。
講義・講演・共同企画のご依頼
バレエ教育、安全、身体、心理、指導者教育、文化、キャリアなど、目的に応じた講義・講演を承ります。
大学・研究機関
バレエ学、舞踊教育、身体文化、芸術と安全を扱う講義や共同研究。
学校・自治体・文化事業
子どもの安全、指導倫理、芸術教育、文化振興に関する講演。
バレエ団・スタジオ
指導者研修、保護者講座、身体・心理・栄養を横断した学び。
公式情報・関連ページ
※本記事は、主催者の公式開催情報と、登壇者・事務局による当日の記録をもとに構成した活動報告です。
実践と研究をつなぎ、日本のバレエの未来をともに考える
大学、研究機関、教育現場、文化事業、バレエ団、スタジオの皆さまと連携し、歴史、教育、身体、安全、キャリアを横断する学びを届けます。講義・講演・研修・共同企画について、お気軽にご相談ください。
