高橋真帆先生|指導者の「想い」をシェアするコラム

バレエが、その子の人生に美しく残るように。|高橋真帆先生
バレエ安全指導者資格® 修了生紹介

バレエが、その子の人生に美しく残るように。高橋 真帆 先生|新潟・スタジオバレリータ

「教えてきたこと」を、もう一度問い直してみる。経験を重ねた指導者が、知識を増やすだけでなく、生徒自身が感じ、考え、選ぶための指導へ。高橋真帆先生の6か月の学びと、教室で大切にされている時間をご紹介します。

修了生紹介執筆:バレエ安全指導者資格®事務局

長く踊り、長く教えてきた先生ほど、自分の中にある「バレエの当たり前」を問い直すことは、簡単ではないのかもしれません。

その教え方で育ってきた自分がいて、その方法で育ててきた生徒たちがいる。大切にしてきたものがあるからこそ、すぐに手放せないこともあります。

一方で、時代が変わり、子どもたちの生活が変わり、身体について分かってきたことも増えました。これから先の生徒たちのために、何を受け継ぎ、何を見直していくのか。

新潟でスタジオバレリータを運営されている高橋真帆先生にとって、バレエ安全指導者養成スクールの6か月は、そんな問いに向き合う時間になりました。

このシリーズでは、バレエ安全指導者資格®で学ばれた先生方の、これまでの歩みと日々の指導に込められた思いをご紹介しています。本記事は、高橋先生からお寄せいただいた受講レポート・修了アンケートをもとに、事務局が構成・執筆したものです。
THE TEACHER BEHIND THE STUDIO

教室を受け継ぐということ。自分の答えを持ち直すということ。

新潟で「スタジオバレリータ」を運営されている高橋真帆先生。2歳からクラシックバレエを始め、日本大学芸術学部演劇学科洋舞コースで学び、卒業後は地元に戻り、お母様とともにスタジオを運営されてきました。現在はバレエに加え、コンテンポラリーダンスやヨガなども指導されています。

幼い子どもから大人まで。それぞれの年齢、経験、身体と向き合いながら、踊ることの楽しさを伝えていらっしゃる先生です。

本格的に指導を始めて十年以上。自分なりの指導の軸も育ってきた頃に、高橋先生はもう一度学ぶことを選ばれました。

理由は、これまでの経験を否定したかったからではありません。自分が教わってきたこと、大切にしてきたこと、そしていつの間にか「当たり前」になっていたことを、少し離れたところから見つめ直したかったからです。

お名前
高橋 真帆 先生
活動地域
新潟県
教室
Studio Ballerita/スタジオバレリータ
指導
バレエ・コンテンポラリーダンス・ヨガ
学歴
日本大学芸術学部 演劇学科洋舞コース卒業
学び
バレエ安全指導者資格® ベーシック・プロフェッショナル講座修了/養成スクール卒業

今回の6か月で、別人のように教育観が変わったのではないと思います。もともと大切にされていたものに、新しい知識と言葉、そして判断の根拠が少しずつ重なっていった。その過程をご紹介します。

BALLET WITHIN LIFE

バレエが人生のすべてでなくてもいい。だからこそ、長く残るものがある。

高橋先生が書かれた言葉を読み進めると、何度も立ち返る考え方があります。

バレエを通して得た経験が、その人の人生の糧になってほしいということです。

スタジオの生徒たちは、バレエだけをしているわけではありません。学校があり、部活動があり、別の習い事があり、それぞれの関心があります。高校卒業後には、地域を離れて進学する生徒もいます。

踊りを専門にする人は、次の場所へ。バレエとは別の道に進む人も、その人自身の人生へ。高橋先生は、どちらの選択も応援したいと書かれています。

「良き人生の通過点として、
このスタジオの場があればいい」高橋真帆先生・受講レポートより

「通過点」という言葉は、少し不思議です。スタジオを運営する側としては、長く通ってほしいと願うこともあるでしょう。それでも、生徒が自分の道を選び、いつかこの場所を離れていくことを前提にしている。

それは、教室の価値を「何人在籍しているか」だけでは測っていない、ということでもあります。

バレエを続けてもいい。離れてもいい。別の形でまた出会ってもいい。大人になったとき、「あの時間があってよかった」と思える経験が残ること。高橋先生のまなざしは、その先の時間にも向けられているのだと思います。

THE TEACHER WHO CONTINUES LEARNING

教えることは学ぶこと。十年の経験を、もう一度問い直す。

高橋先生は、指導を始めた頃の自分について率直に書かれています。伝えたいことが多く、「私についてきて」という勢いで、自分のペースでクラスを進めていたのではないか、と。

たくさん教えることは、一生懸命であることの表れでもあります。でも、伝えた量と、生徒が理解した量は同じではありません。

経験を重ねる中で、高橋先生の関心は少しずつ変わっていったのでしょう。自分が何を教えたかだけでなく、目の前の子が何を受け取り、何を感じているのか。

スクールでは、医学、身体科学、栄養、発達心理学、哲学、音楽、歴史、芸術など、異なる分野からバレエを学ばれました。そして、講義を聞くたびに、日々のレッスンへ持ち帰り、実際に試してこられました。

知識が増えるほど、自分の知らなかったことにも気づく。すぐには答えを出せなくなることもある。それでも、以前より自分で考えるための材料は増えていく。

ここに、大人になってから学び直すことの価値があるのだと思います。経験を積んだ教師が、経験に頼らずに考え直せること。それ自体が、次の世代に見せられる学びの姿勢なのではないでしょうか。

RIGHT ANSWERS AND GOOD TEACHING

「正しく教える」と「その子にとって良い指導」は、同じだろうか。

高橋先生の修了アンケートの中で、特に心に残った言葉があります。

「正しく教えることと、その子にとって良い指導をすることは、必ずしも同じではない」高橋真帆先生・修了アンケートより

ここでいう「正しさを問い直す」とは、基礎や安全を曖昧にすることではありません。

身体の構造にかかわること、成長期に配慮すべきこと、痛みや怪我に対応すること。こうした領域では、教師の経験だけで判断せず、現在得られている知識や専門家の意見を確かめる必要があります。

一方で、音楽をどう感じるのか。何を美しいと思うのか。どのような言葉が身体の感覚につながるのか。その答えは、一人ひとり違っていてもいい。

守るべきところには根拠を持つ。けれども、表現には一つの答えだけを押しつけない。

この二つを区別することは、簡単そうでいて、実際の指導ではとても難しいことです。

「バレエはこういうもの」と説明すれば、レッスンは早く進むかもしれません。でも、その説明が、その子の理解を助けているとは限りません。高橋先生は今、正しい形を伝えることだけでなく、その子自身が理由を理解し、納得して動けることを大切にされています。

A WORD THAT OPENS A QUESTION

先生の言葉で動かすのではなく、生徒が考えるきっかけを渡す。

ある講義で学んだ「ブレーキ」という言葉を、中高生のクラスで使ってみたそうです。

これまで「軸足を」「背中を」「足裏を」と細かく伝えていたことが、「どこでブレーキをかけているのだろう」という問いになったとき、生徒たちが自分の身体を考え始めた。その変化が嬉しかったと、高橋先生は書かれています。

また、「引き上げとは何のために行うのか」と生徒へ尋ねたときには、「ジャンプしやすい」「ふわっとする」「二階席のお客様まで届きそう」と、さまざまな答えが返ってきたそうです。

言葉を、正解を伝えるためだけに使わない。

DAY11の「聴く身体、話す動き」の講義後には、動きから感じたことを子どもたち自身の言葉にしてもらいました。「お餅が伸びる感じ」「寂しい感じ」。教師が予定していなかった表現が現れます。

その言葉を聞くことで、今度は先生自身が動きを新しい角度から見られる。教室の中で、教える側と学ぶ側の境界が少し変わる瞬間です。

教師が言葉を増やすことより、生徒の中に問いが生まれること。

分かりやすい説明とは、すべてを説明することではないのでしょう。本人が試し、気づき、自分の身体で確かめられる余白を残すこと。高橋先生の実践には、その方向への変化が見えます。

RESPECT FOR THE BODY

身体に触れる前に、考える。触れなくても伝えられる力を。

バレエの指導では、教師が生徒の身体に触れて位置や方向を伝えることがあります。しかし、教師にとって慣れた行為であっても、生徒にとって同じとは限りません。

高橋先生は、バレエに加えてヨガやピラティスを学ばれてきた経験から、「身体への敬意」と「解剖学に基づく理解」の両方を大切にされています。

大人には事前に身体接触を伴う指導について説明し、子どもにも触れる前に声をかけること。できる限り言葉や見本、道具で伝え、必要なときに限って身体に触れること。レポートでは、そうした原則を自分の言葉で整理されました。

「触れない指導」ではなく、
「触れなくても伝えられる力」を磨き続ける。高橋真帆先生・受講レポートをもとに抜粋

これは、単なる技術の話ではないと思います。

生徒の身体は、教師が自由に直してよいものではない。本人の感覚があり、意思があり、尊重されるべき境界があります。

そのことを、教師自身の言葉や行動にどう反映させるか。高橋先生は、その問いを大切にされています。

身体への接触が必要だと判断した場合でも、本人の理解と同意を確認すること、断ることができる環境を整えること。その積み重ねが、生徒の安心につながっていきます。

SAFETY MEANS A FUTURE

安全は、今日のレッスンを無事に終えることだけではない。

成長期の身体は、大人を小さくしたものではありません。骨も筋肉も、心も、発達の途中にあります。同じ年齢でも、その状態は一人ひとり異なります。

高橋先生は、ポワントを始める際の基準、身体のコントロール、栄養、睡眠、ウォームアップなどを学びながら、教室の中にどのように取り入れるかを具体的に考えてこられました。

印象的なのは、安全を「できることを制限するための考え方」としてだけ捉えていない点です。

今日、無理をして一つの技ができたとしても、その先で身体を痛めてしまったらどうでしょう。練習を重ねるほど、自分の身体を嫌いになってしまったらどうでしょう。

「痛いと言える」「今日は休むと選べる」「自分の身体の変化に気づける」。こうした力も、踊りを続けるための大切な力です。

安全とは、教師がすべてを判断してあげることでもありません。 子どもの発達や個々の状況に応じて大人が責任を持つことと、本人が自分の身体について少しずつ判断できるよう支えること。この両方が必要です。

健康であることを、舞台のための条件としてだけではなく、その先の暮らしや人生のためにも考える。

高橋先生が繰り返し大切にされている「バレエは人生の中にある」という考え方は、身体を守ることにもつながっています。

THE WHOLE ART OF BALLET

身体を知ることは、バレエの美しさを狭めることではない。

高橋先生の学びには、医学や解剖学への関心と同じくらい、音楽、歴史、哲学、そして美しさへの強い好奇心が表れています。

バロックダンスの舞踏譜を読み、音楽が生まれた時代を知り、フランス語の響きと身体の関係を考える。「美しいとは何か」という問いから、ご自身がなぜ踊りに惹かれるのかまで考えを広げられています。

バレエのポジション一つにも、身体の機能と、長い歴史の中で受け継がれてきた美意識があります。

私たちは、ときに完成された「形」を先に教えようとしてしまいます。でも、その形の背景を知ることで、伝え方が変わることがあります。

身体を知ることと、芸術を深く味わうことは、別々の学びではありません。

音を聴くこと、動きの質感に気づくこと、自分と異なる解釈に出会うこと。その一つひとつが、その人にしかない表現につながっていく。

高橋先生は、伝統的な基礎を大切にしながら、そこに生徒一人ひとりの感性が入る余地を残そうとされています。

A STUDIO THAT CHILDREN COLOR

真っ白なスタジオに、色をつけるのは生徒たち。

新しいスタジオについて、高橋先生は「真っ白」というコンセプトを語られています。

建物はただの箱であり、そこに命を吹き込み、色をつけていくのは生徒たち自身なのだと。

この言葉からは、スタジオを教師の理想像で完成させるのではなく、そこに集う一人ひとりの経験によって育つ場所として考えていることが伝わってきます。

年齢も、得意なことも、夢も違う生徒たちが集まる。みんなを同じ色にする必要はない。だからこそ、そこに生まれる風景がある。

また、スタジオの外にも学びの場を広げられています。ほかの教室との合同企画、舞台や地域行事への参加、異なる芸術家との出会い。バレエを、教室の中だけで完結させない実践です。

地域に根ざしながら、外の世界へつながる。そして、いつか卒業していく生徒たちにも、この場所で過ごした時間が残る。

教室の主役は先生ではなく、そこを自分の居場所として育てていく生徒たち。高橋先生が思い描かれるスタジオには、そんな願いが込められているように思います。

WHAT SIX MONTHS CAN CHANGE

学びが増えるほど、答えが増えるとは限らない。

6か月の間、高橋先生は毎回の講義を、自分自身の経験と照らし合わせて丁寧に振り返られました。

印象に残った言葉を書くだけではありません。次のレッスンで生徒に問いかけ、指導の言葉を変え、身体の使い方を試し、さらに新しい疑問を持つ。学びと実践が行き来しています。

修了アンケートには、知識が増えたからこそ簡単に答えを出せなくなった、という意味の振り返りもありました。

それは、自信をなくしたということではないのでしょう。何が分かっていて、何がまだ分からないのか。どの判断には根拠があり、どこから専門家の力が必要なのか。その境界が以前より見えるようになった、ということでもあります。

何でも知っている先生になる必要はない。しかし、分からないままにしない。自分の知っていることだけを、すべての生徒へ当てはめない。

高橋先生がスクールで得たのは、知識に加え、そうした姿勢をさらに確かにする時間だったのではないかと思います。

「学ぶことは答えを増やしていくことではなく、問いを持ち続けられる自分になること」高橋真帆先生・受講レポートより
WHAT WE HOPE TO PASS ON

高橋先生が次の世代へ渡そうとしているもの

高橋先生、6か月間にわたる丁寧なレポートをありがとうございました。

学びを振り返りながら、何度も書いてくださったのは、生徒への思いと、教える仕事への責任でした。

でも、私たちが特に大切だと感じたのは、その思いが「私が良いことを教えたい」だけで終わっていないことです。

生徒自身が、自分の身体を知る。

自分で理由を考える。

感じたことを自分の言葉にする。

痛いときには痛いと言い、必要なら休む。

そして、いつか自分の人生を自分で選んでいく。

教師にできるのは、そのすべてを代わりに決めてあげることではないはずです。

その子が自分で感じ、考え、選べるようになるまで、必要なことを手渡す。ときには教え、ときには見守り、ときには別の専門家や新しい世界へつなぐ。

高橋先生が大切にされている「バレエって楽しい」という言葉は、決して軽い言葉ではないのだと思います。

自分を傷つけてまで続けるのではなく、自分の身体を大切にしながら踊れること。人と比べるだけではなく、自分の小さな変化を喜べること。ひとつの習い事が終わったあとにも、人生の中に美しい時間として残っていくこと。

先生の答えを覚えることから、
自分で感じ、考え、選び、判断できることへ。

バレエを通して人を育てるとは、そうした経験を少しずつ積み重ねることなのかもしれません。

高橋先生がこれまで大切にされてきたものと、これから新しく育てていかれるもの。その両方を、私たちも楽しみにしています。

そしてこの学びが、資格取得の一時点で終わるのではなく、目の前の一人ひとりとの日々の中で、これからも生き続けていくことを願っています。

バレエ安全指導者資格®事務局

CERTIFIED TEACHERS MAP

バレエ安全指導者資格® 安全指導者MAP

各コースを修了された先生がいらっしゃる全国のスタジオを、お教室選びや相談先を探す際の参考にご覧いただけます。

※ピンをクリックすると、コースを修了された先生のお名前やスタジオが表示されます。

公式サイトの最新「全国安全お教室MAP」を確認する ↗

執筆:バレエ安全指導者資格®事務局

学ばれた先生方の実践と言葉をもとに、技術だけにとどまらないバレエ教育の可能性をご紹介しています。

KEEP LEARNING

バレエを通して、人を育てる。

解剖学・医学・栄養・心理・教育・哲学・音楽・歴史・芸術。バレエ安全指導者資格®では、正しい技術を伝えるためだけでなく、目の前の一人を理解し、安全に判断するための学びを提供しています。

バレエ安全指導者資格®
運営:セーフダンスアソシエーション
  • URLをコピーしました!