二木祐梨菜先生|指導者の「想い」をシェアするコラム

学び続けることが、生徒を守る力になる|二木祐梨菜先生
バレエ安全指導者資格® 修了生紹介

学び続けることが、
生徒を守る力になる二木祐梨菜先生|ベーシックコース・アーカイブコース修了

自分が経験してきたことを、そのまま「正しい指導」として次の世代へ渡さない。身体と心について学び直し、生徒の声を聞き、一人ひとりに合う方法を考える。二木先生が目指しているのは、分からなさや痛みを一人で抱えさせず、踊る喜びとともに成長を支えられる指導です。

読了目安:約14分執筆:バレエ安全指導者資格®事務局

現在、バレエに関する知識を深め、それを活かした仕事に就くために勉強を続けている二木先生。ベーシックコースのレポートには、初めて知る身体の仕組みへの驚きとともに、これまで自分が受けてきた指導や、痛みを我慢して踊った経験を丁寧に振り返る姿が記されています。

二木先生は、過去を誰かへの批判に変えるのではなく、「これから出会う生徒に、同じ不安や怖さを繰り返さないために何を学ぶべきか」と考えます。知らなかったことを素直に認め、自分の経験さえも検証し直しながら、身体的にも精神的にも安心できるバレエを目指す。その誠実な学びの姿勢をご紹介します。

このシリーズでは、バレエ安全指導者資格®を受講・修了された方々が、学びを通して何を感じ、これからどのような指導や活動を目指しているのかを、事務局が寄り添いながらお届けしています。今回は、身体の安全、心理的な安心、言葉と体験、個人差、栄養、そして踊る喜びを深く考え続けた二木先生です。
TURNING EXPERIENCE INTO LEARNING

自分の経験を正解にせず、学び直すことから始める

二木先生のレポートでまず伝わってくるのは、自分の経験を丁寧に振り返る力です。

発表会前に捻挫をしたとき、「病院へ行くほどではない」と考え、痛みを抱えたまま踊ったこと。バレエ用語だけで振付を説明され、意味が分からないまま、見よう見まねでついていこうとしたこと。柔らかい身体への憧れから、関節を無理に伸ばそうとしたこと。インターネットで見つけたトレーニングを、何に効くのか十分に理解しないまま試したこと。

二木先生は、こうした経験を「自分も頑張ったから、生徒も同じように頑張るべき」とは捉えません。新しい知識と照らし合わせながら、当時は何が分かっていなかったのか、どのような危険があったのか、教える立場なら何を変えるべきかを考えています。

自分が経験してきたことが、
すべてではない。二木先生のレポートより

自分の過去を肯定するだけでも、否定するだけでもなく、学びによって意味づけし直す。この内省の力は、指導者が無意識に過去の指導を再現してしまうことを防ぐ、大切な土台になります。

修了コース
ベーシックコース・アーカイブコース
現在
バレエの知識を深め、活かせる仕事を目指して勉強中
学びの特徴
体験・内省・理解を結びつける
大切にすること
安全・対話・個人差・踊る喜び
KNOWLEDGE THAT PROTECTS

「痛くても頑張る」を、当たり前にしないために

怪我をしたとき、どこへ相談するのか。病院、整骨院、民間療法の施設には、それぞれどのような役割の違いがあるのか。二木先生は講義を通して、まず医療機関で診断を受けることの大切さを学びました。

それは、整骨院や民間療法を否定するためではありません。身体の中で何が起きているかを確認し、適切な治療やリハビリテーションへつなげるために、順序と役割を理解することが必要だと受け止めています。

また、二木先生が強く心を動かされたのは、痛みや怪我を過小評価することが、心にも影響を与えるという学びでした。結果だけを求められ、痛みを訴えにくい環境では、生徒は「成果を出せない自分には価値がない」「先生の期待に応えなければならない」と感じることがあります。

身体を守ることと、心を守ることは別々ではありません。
痛みを言えること、休む選択が認められること、必要な専門家へつながれること。その関係と仕組みまで含めて、安全な指導環境がつくられます。

二木先生が求めているのは、怪我を一件も起こさないと断言する指導者ではなく、痛みを見逃さず、分からないことを抱え込まず、必要な判断と連携ができる指導者です。

EVERY BODY IS DIFFERENT

柔らかさや180度を、全員の正解にしない

関節弛緩性、股関節の骨格、関節の向き、靭帯の性質、筋肉の柔軟性。ターンアウトや可動域には、努力だけでは変えられない身体的な条件があります。

二木先生は、柔らかい身体に憧れ、無理に関節を伸ばそうとしてきた経験があるからこそ、「柔らかいほど良い」「大きく開けるほど努力している」という見方を問い直しています。関節弛緩性が高いことは、表現上の利点になる場合がある一方、安定性や怪我のリスクにも目を向けなければなりません。

まず、目の前の身体を知る

全員に同じ角度を求めるのではなく、骨格、可動域、筋力、年齢、経験を見ながら、その人にとって無理のない範囲を考える。形を押し広げる前に、まっすぐ立つこと、支持する力を育てること、必要な筋肉を理解することから始める。

「自分に合った方法が、相手にも合うとは限らない」。二木先生が繰り返し確認しているこの視点には、生徒を理想の型へ押し込めるのではなく、その人固有の身体を尊重しようとする姿勢が表れています。

指導の出発点は、
その子の身体を理解すること。
NO ONE LEFT ALONE

分からない生徒を、一人で悩ませない

二木先生は、指導者と生徒のコミュニケーションを、安全のために欠かせないものと考えています。

初心者だった頃、バレエ用語だけで振付を説明されても理解できず、周囲は分かっている前提で進んでいく。その中で、質問することもできず、自分で調べ、見よう見まねで対応していた経験がありました。

その経験から二木先生は、理解できないことを、生徒の努力不足だけにしてはいけないと考えます。複数の生徒を指導する中で、一人ひとりを常に細かく見ることが難しい場面はあります。だからこそ、質問できる雰囲気をつくり、生徒の側からも困っていることを伝えられる関係を育てる必要があります。

「分からなかったら、聞いていい」教室へ

説明をしたから終わりではなく、どのように伝わったかを確かめる。理解できていない生徒を置いていかない。生徒が先生の機嫌を気にせず、痛みや不安、疑問を言葉にできるようにする。

この姿勢は、生徒を受け身にするものではありません。自分の状態を伝え、質問し、理解しようとする力を育てることでもあります。二木先生が目指すのは、先生に従うだけの関係ではなく、先生と生徒が対話しながら、よりよい学び方を一緒につくる関係です。

WORDS NEED EXPERIENCE

言葉を「記号」で終わらせず、身体の体験へつなげる

二木先生が最も印象に残った講義として挙げたのは、実際に身体を動かし、感じながら学ぶポイントワークでした。

「引き上げる」「軸をつくる」「踵を浮かせる」「ターンアウトする」。指導者には馴染みのある言葉でも、生徒がその感覚を経験していなければ、言葉はただの記号になってしまいます。

場所を知ることで、そこへ意識を向けられる。動きを体験したうえで言葉を与えられると、言葉と感覚が結びつく。意味や役割まで理解すると、別の動きにも応用できるようになる。二木先生は、頭だけでも身体だけでもなく、その両方がつながる学びを大切にしています。

体験して、感じて、言葉で整理する。
そこから本当の理解が始まる。

将来、生徒へ伝えるときも、一つの表現で伝わらなければ、見本、触覚、イメージ、段階的な練習など、別の方法を探す。できない生徒を責める前に、伝え方が合っているかを考える。二木先生の学び方そのものが、これからの指導方法へつながっています。

PROTECTING THE JOY OF DANCE

成果を求める前に、踊ることを好きでいられるように

二木先生が理想とするのは、身体的にも精神的にも安心して取り組めるバレエです。

もちろん、バレエには難しさがあります。基礎を繰り返す時間、思うように動けない悔しさ、舞台をつくる責任、プロを目指す厳しさもあります。二木先生は、それらをなくして「楽なバレエ」にしたいのではありません。

大変さや難しさがある中でも、最初にバレエを見たときの憧れ、綺麗な衣装を着て踊る喜び、物語を表現する面白さ、仲間と力を合わせる達成感を失ってほしくないと願っています。

純粋な感情を、評価で上書きしない

「楽しい」「嬉しい」「難しい」「怖い」「悔しい」。生徒が感じたことを、正解や評価だけで塗り替えず、自分の感情として受け止められるようにする。それは、踊りを長く続けるための内側の力を育てることでもあります。

結果を出したときだけ認めるのではなく、考えたこと、工夫したこと、仲間と協力したこと、自分の身体を守る判断ができたことも成長として見る。二木先生にとって、バレエの価値は舞台上の成果だけではなく、その人が自分らしく生きるための力へつながることにあります。

RESPONSIBILITY TO GUIDE

導く人だからこそ、完成したふりをしない

二木先生は、「私にとって指導者とは、導いてくれる人」と書いています。

指導者の言葉や態度は、生徒の技術だけではなく、自分の身体の見方、失敗への向き合い方、他者との関係にも影響します。だからこそ、指導には大きな責任が伴うと考えています。

一方で二木先生は、指導者に唯一の完成形があるとは考えていません。身体に関する知識も、社会における安全やハラスメントへの認識も更新されていきます。目の前の生徒も一人ひとり違います。

二木先生が目指すのは、「何でも知っている先生」ではありません。
分からないことを確認し、必要に応じて専門家へつなぎ、新しい知識によって自分の考えを修正できる先生です。

思いやりや共感だけでなく、必要なときには止めること、伝えること、医療機関への受診を勧めることも指導者の責任です。優しさと明確さを両立させながら、生徒の現在だけでなく、バレエの先に続く人生まで考えられる指導者へ。二木先生は、そのために学び続けようとしています。

知識は、正しさを誇るためではなく、目の前の人を守るためにある。
A BALLET WORLD FOR MANY PURPOSES

それぞれの目的と身体に合う、日本のバレエへ

二木先生は、日本では子どもから大人、シニアまで、さまざまな年代の人がバレエを楽しめることに魅力を感じています。

だからこそ、海外の高い技術水準と比較し、すべての生徒へ同じレベルや身体条件を求めるのではなく、日本でバレエを学ぶ一人ひとりの目的を大切にしてほしいと願っています。

プロを目指す人、舞台を楽しみたい人、健康のために踊る人、初めて芸術に触れる人。目的が違えば、必要な指導や負荷、目標の置き方も異なります。

安心・安全に、無理なく、怪我なく、
それぞれの目的で芸術を楽しめるように。

その理想を現実にするため、まず自分が知識をつけること。学んだだけで終わらず、行動へつなげること。そして、学びを継続すること。大きな言葉を掲げる前に、自分ができる一歩を考える二木先生の姿勢には、静かな責任感があります。

BESIDE EACH STUDENT

生徒の身体と心、そしてその先の人生に寄り添うために

二木先生にとってバレエは、嬉しさも、苦しさも、楽しさも、難しさも含めて、自分を成長させてくれた存在です。

だからこそ、生徒にとってのバレエも、上達だけを測る場所ではなく、その人の成長に寄り添う存在であってほしいと願っています。

私にとって指導者とは、
導いてくれる人。二木先生

二木先生の「導く」は、先生が決めた一つのゴールへ生徒を連れていくことではありません。生徒が自分の身体を知り、痛みや不安を伝え、分からないことを質問し、自分の目的に合った歩み方を選べるように支えることです。

過去の経験をそのまま繰り返さず、学びによって見直す。自分に合った方法を相手へ押しつけず、目の前の身体を観察する。知識だけを伝えず、体験と感覚を通して理解を支える。そして、成果だけではなく、踊る中で生まれる純粋な感情を大切にする。

二木先生は、すでにすべての答えを持っているから指導者を目指すのではありません。生徒を大切にしたいという願いを、根拠のある知識と行動へ変えるために学び続けています。

その誠実な歩みは、痛みや分からなさを一人で抱えず、安心してバレエを好きでいられる場所を、少しずつ増やしていく力になると感じています。

バレエ安全指導者資格®事務局

CERTIFIED TEACHERS MAP

バレエ安全指導者資格® 安全指導者MAP

各コースを修了された先生がいらっしゃる全国のスタジオを、お教室選びや相談先を探す際の参考にご覧いただけます。

※ピンをクリックすると、コースを修了された先生のお名前やスタジオが表示されます。

執筆:バレエ安全指導者資格®事務局

提出レポートとアンケートをもとに、学び続ける先生方の歩みと、それぞれの指導に込められた願いをご紹介しています。

NEXT STEP

知識と対話で、生徒が安心して学べる指導へ

バレエ安全指導者資格®では、解剖学、整形外科学、栄養学、心理、発達、音楽、歴史、指導法を横断して学びます。経験だけに頼らず、目の前の生徒の身体と心を観察し、分からないことを一緒に確かめられる指導へ。

バレエ安全指導者資格
運営:Safe Dance Association(セーフダンスアソシエーション)
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