篠田典子先生|指導者の「想い」をシェアするコラム

痛みを知り、学び続け、生徒の「好き」を守る|篠田典子先生
バレエ安全指導者資格®コラム

痛みを知り、学び続け、
生徒の「好き」を守る篠田 典子先生|兵庫県加古川市・トップラン・スポーツスクール尾上校/石守校

自分が受けてきた指導をそのまま繰り返すのではなく、身体の仕組みを学び、言葉を見直し、一人ひとりに届く方法を探していく。篠田典子先生が大切にされているのは、厳しさの中にも安心があり、怪我なく踊り、心も身体も少し軽くなって帰れるレッスンです。

読了目安:約20分執筆:バレエ安全指導者資格®事務局

幼い頃からバレエを続け、長く所属教室で指導を重ねてきた篠田典子先生。師匠から受け取ったバレエを大切にしながら、現在はトップラン・スポーツスクール尾上校・石守校で、幼児、ジュニア、大人の方々へ指導されています。

篠田先生の受講レポートには、生徒の変化を見つめる細やかなまなざしと、「もっと分かりやすく伝えたい」「怪我をしてほしくない」「でも、過保護にするのではなく、自分で考えて踊れるようになってほしい」という願いが、何度も記されていました。

ご自身の怪我や心身の不調、所属教室の方針に悩んだ経験、そして独立。その一つひとつを、生徒を守るための学びへ変えようとされている姿に、事務局として何度も心を動かされました。

このシリーズでは、バレエ安全指導者資格®で学ばれた先生方の歩みと、その先にある指導への願いをご紹介しています。今回は、ベーシックコースに続き、半年間のバレエ安全指導者養成スクールを卒業された篠田典子先生です。解剖学、医学、心理、栄養、力学、音楽、歴史、哲学、美学、安全管理を横断して学ばれました。長期間にわたって提出してくださったレポートをもとに、篠田先生が大切にされていることを、事務局の視点からお届けします。
BALLET AS A PART OF LIFE

「私にとって、バレエは自分の一部です」

篠田先生は、ご自身にとってのバレエを「自分の一部」と表現されています。バレエに携わっていない自分を想像できないほど、生きていく中に自然にあるもの。幼い頃から踊ることが楽しく、できないことが悔しくて泣いた日もありながら、辞めたいと思ったことはなかったと振り返ります。

その深い愛情があるからこそ、生徒たちにも、まず「踊ることは本来とても楽しい」という感覚を大切にしてほしいと願っています。

踊ることは、本来とても楽しい。
その気持ちを大切に、共に育てていきたい。篠田典子先生の受講レポートより

一方で、篠田先生はバレエを「普通ではない動き」とも伝えています。日常とは異なる身体の使い方だからこそ、地道な基礎とトレーニングが必要になる。楽しさだけを語るのではなく、積み重ねる厳しさも誠実に伝えています。

「好きだから何でもできる」ではなく、「好きなことを長く続けるために、身体を知り、丁寧に取り組む」。篠田先生の指導の出発点には、バレエへの愛情と、それを壊さずに育てたいという願いがあります。

活動地域
兵庫県加古川市、兵庫県神戸市須磨区名谷
指導教室
トップラン・スポーツスクール尾上校/石守校
指導対象
幼児・ジュニア・大人バレエ
資格・学び
バレエ安全指導者養成スクール卒業
TURNING PAIN INTO CARE

自らの痛みを、生徒たちを守るための学びへ

篠田先生が安全な指導を強く願う背景には、ご自身の身体の経験があります。若い頃、アラベスクで脚を持ち上げられ、背中を強くつかまれる指導を受けたことで腰を痛めたこと。長年にわたって股関節や脚の不調を抱え、心の負担が身体へ表れる苦しさも経験してきたこと。

所属教室の方針の中で、ポワントを履く時期や身体の安全に疑問を持ちながら、師匠の急逝をきっかけに環境が変わり、教室を辞めるか、バレエそのものを辞めるかまで悩まれた時期もありました。

自分が怪我を経験しているからこそ、
生徒たちには怪我をしてほしくない。

その経験は、過去への批判だけに向かうのではなく、「今、目の前にいる生徒へ何ができるか」という学びへ向かいました。姿勢、足部、股関節、膝、ターンアウト、呼吸、栄養、初期治療、慢性疼痛。学んだ内容を、ご自身の身体と照らし合わせながら、生徒の安全へ返していこうとされています。

気づいた時に、止めることも指導

背中の歪みが気になった中学生には整形外科の受診を勧め、体育で足を痛めたままレッスンへ来た生徒には、その日は帰宅して受診するよう伝えました。後に軽度の肉離れだったことが分かっています。

踊らせることだけが指導ではありません。異変を見逃さず、無理を止め、必要な専門家へつなぐことも、生徒の身体を預かる指導者の大切な役割です。

一時救命処置の講義を受けた後には、「見て聞いただけでは、実際の場面で動けないかもしれない」と、市役所で行われる普通救命講習会へ申し込まれました。知識を得たところで満足せず、実際に使える力へ変えようとする行動に、篠田先生の責任感が表れています。

SEEING THE PERSON BEFORE THE MOVEMENT

レッスンが始まる前から、生徒の状態を見ている

篠田先生が見ているのは、足の高さやポジションだけではありません。教室へ入ってきた時の表情、立ち姿、レベランスの雰囲気、呼吸、いつもとの違い。その小さな変化から、「今日は何かあったのかな」「疲れているのかな」と感じ、声をかけることがあります。

学校行事や体育、部活動で疲れていると分かれば、「今日は頑張って跳ぶより、きちんと丁寧に動いてね」と伝える。高学年の生徒が、自分から身体の状態を伝えに来られるようになったことも、大切な成長として受け止めています。

状態を言葉にできることも、身体を守る力

痛み、疲れ、違和感を隠して指示に従うのではなく、今の自分を伝えられること。それは怪我の予防だけでなく、自分の身体を理解し、管理していく力につながります。

篠田先生は、指導者が生徒のすべてを決めるのではなく、生徒自身が自分の状態に気づき、言葉にできる関係を育てようとされています。

大人の方に対しては、家庭や仕事へ踏み込み過ぎない距離も大切にしながら、「何か話したいと思った時には、深刻になり過ぎずに話ができ、笑顔で帰っていただけたら」と考えています。

近づき過ぎず、離れ過ぎず。その人の人生を尊重しながら、レッスンの時間が少し気持ちを切り替えられる場所になることを願っています。

MORE THAN ONE WAY TO UNDERSTAND

「押してもダメなら、引いてみる」ための引き出し

篠田先生が理想とするのは、違いを指摘するだけではなく、疑問に対して答えへたどり着くきっかけを渡せる指導者です。

同じ動きでも、一つの説明ですべての人に伝わるわけではありません。言葉で分かる人、図で分かる人、触れて感じる人、自分で動きを比較して分かる人。年齢、経験、認知特性、身体の状態によって、理解への入口は異なります。

同じ動きでも、いろいろな視点から。
その人に合った方法を伝えられる引き出しを持ちたい。篠田典子先生の受講レポートより

支持基底面を四角で描いて説明したところ、子どもから大人までバランスが大きく改善したこと。壁を押す感覚を伝えると、大人の生徒の軸足が変わったこと。鎖骨から腕が始まる意識を共有すると、腕を格段に長く使えるようになった生徒がいたこと。

篠田先生は、学んだ方法を一方的な正解として押しつけるのではなく、生徒の反応を見ながら確かめています。

レッスンの中の「実験」

子どもたちへ何通りかの方法を提案し、「どう違う?」「どちらが踊りやすい?」と問いかけることがあります。すると、それぞれが身体で感じたことを言葉にし、「こういうこと?」と自分から意見を伝える姿が出てきました。

答えをすべて渡すのではなく、感じて、比べて、考える。その過程が、生徒自身の踊る力を育てていきます。

WORDS THAT CHANGE THE BODY

少し伝え方が変わるだけで、身体は変わる

篠田先生は、「言語化が苦手です」と率直に書かれています。しかし、レポートから伝わってくるのは、言葉を諦めている姿ではなく、どうすれば目の前の人に届くのかを粘り強く探し続ける姿です。

大人の初心者へは、バレエ用語の日本語の意味、方向、ポジション、バーの前半を絵でまとめたプリントを渡しています。「バレエ用語は呪文です」と言われた経験から、何も知らずに始める方の入口を少しでも分かりやすくしたいと考えたからです。

分からない人に、どう伝えるか。
言葉は、できる・できないを分けることがある。

「支持基底面の四角」「壁を押す」「足じゃんけん」「踵ウキウキ」。専門的な知識が、生徒の身体へ届く言葉へ置き換えられた時、動きが変わり、表情も明るくなります。

小さな子どもにはポイントを一つに絞り、年齢が上がれば理由を加える。大人の方には、日常の身体との違いや、なぜその練習をするのかを説明する。相手に合わせて情報量を調整することも、篠田先生が意識されていることです。

事務局として感じるのは、篠田先生が苦手だとおっしゃる「言語化」を、すでに日々の指導の中で丁寧に実践されていることです。
難しいのは、言葉がないからではなく、生徒に本当に届く言葉を、安易に決めたくないからなのかもしれません。その慎重さもまた、篠田先生らしい誠実さだと感じます。
WARMTH WITH CLEAR EXPECTATIONS

厳しさをなくすのではなく、傷つける厳しさを繰り返さない

篠田先生は、昭和の時代の厳しい指導や、同じ失敗をしても、笑って流される子、強く怒られる子、何も言われず無視される子がいた経験を振り返っています。

その中で最もつらいと感じたのは、「無視」でした。だからこそ現在は、頑張っていたところや、改善してほしいところなど、何か一つは必ず言葉をかけることを意識されています。

心理的安全性は、何も注意しないことではない

必要な修正は伝える。怪我につながることは、忘れた頃にも繰り返し伝える。一方で、感情的に言葉を発しない。できないことを人格の問題にしない。分からない時に質問でき、痛みや不安を伝えられる関係をつくる。

篠田先生が目指しているのは、ただ優しいだけのレッスンではなく、安心して課題に向き合えるレッスンです。

身体に触れて修正する時にも、確認を取ること、触れる場所へ配慮することを見直しています。触られることが苦手な生徒には、まず生徒自身の手を篠田先生の身体に触れさせ、その手の上から支える方法も用いています。

同時に篠田先生は、バレエに反復や粘り強さが必要であることも否定しません。

きちんと、丁寧に、確実に。
それがあっての、気合いと根性と集中力。篠田典子先生の受講レポートより

根性だけで身体を動かすのではなく、安全と正確さを土台に、諦めずに取り組む力を育てる。厳しさと安心のどちらかを選ぶのではなく、その両方をどう成立させるかを考え続けている先生です。

THE WHOLE PERSON, NOT ONLY THE DANCER

身体だけでなく、心、食事、睡眠、生活全体を見る

篠田先生は、ご自身の脚の不調が心の状態と関係していた経験から、身体だけを切り離して考えることの難しさを知っています。元気に見えても、ストレスは身体や内臓へ影響することがある。怪我をすれば心も落ち込み、食事や睡眠が乱れれば回復も遅くなる。

スクールで解剖学、心理学、栄養学、整形外科学を横断して学ぶ中で、「名前が違っても、すべてのことがつながっている」と何度も感じられました。

心と身体のどちらかではなく、
その人全体が整ってこそ、踊ることができる。

かつて、学校へ行けなくなり、拒食から入院した生徒を見守った経験もあります。退院後、まともに動けない状態から、少しずつバーレッスンを増やしていったこと。その経験から、生徒たちへ「しっかり食べて、しっかり寝る」「無理なダイエットは危険」と繰り返し伝えてきました。

体重の数字だけで判断しないこと、炭水化物を極端に抜かないこと、ジュニア期の栄養不足が身長、筋力、集中力、月経、骨密度、将来の健康へ影響すること。若い生徒が誤った情報に流されないよう、どのような言葉で伝えるかを考えています。

年齢と生活に合わせた安全

幼児には発達段階に合った遊びや動きを取り入れ、学生には学校、塾、部活、受験による疲れを考える。大人には仕事や生活習慣による左右差、シニアには栄養や筋力低下、関節の状態へ配慮する。

同じレッスンに見えても、必要な支えは一人ひとり違います。篠田先生は、バレエを教える前に、その人が今どのような生活の中で踊っているのかを見ようとされています。

BALLET AS A SHARED ART

ソロだけではなく、音楽と呼吸を合わせ、みんなでつくる

篠田先生が生徒へ伝えたいバレエの魅力は、一人で上手に踊ることだけではありません。コールド・バレエで音楽や呼吸を合わせ、みんなで一つの舞台をつくる面白さと難しさ。支えてくれる家族、仲間、スタッフの方々への感謝です。

続けられることは、当たり前ではない。
支えてくださる方への感謝を忘れないで。篠田典子先生が子どもたちへ伝えている言葉

音楽を大切にする篠田先生は、中学生以上のクラスではレッスン曲を毎月替え、前奏から速さや雰囲気を感じるよう促しています。拍子、アクセント、音の重さや軽さを学ぶ中で、これまで感覚で伝えてきたことを、より具体的に届けようとされています。

また、バレエ史、音楽史、服飾史、美術、哲学、美学を学び、「バレエは総合芸術」という師匠の言葉の意味を、あらためて実感されました。

受け継いだ「師のバレエ」を、そのままではなく今へ

篠田先生の指導のベースには、普段は優しく、レッスンでは厳しく、独創的な振付をされた師匠から受け取ったバレエがあります。

その大切なものを守りながら、医学や心理学、栄養学、安全管理の知識を加え、今の子どもたちや大人の生徒へ合う形にして手渡していく。それは、伝統を捨てることではなく、次の世代がより長く受け取れる形へ整えることなのだと思います。

LEARNING THAT RETURNS TO THE STUDIO

ノートに書き留め、身体で確かめ、その日の現場へ返す

篠田先生の学び方には、驚くほどの粘り強さがあります。アーカイブを止めて書き留め、少し戻って見返し、以前のノートや資料を出して照らし合わせる。画面の文字を書き写し続け、「ボールペンの芯を何回替えたか分からない」と笑いながら振り返っています。

けれど、学びはノートの中だけにとどまりません。支持基底面、足指トレーニング、壁を押す感覚、呼吸、鎖骨からの腕の意識、動的ストレッチ。理解できたことは、できる範囲でレッスンへ持ち帰り、生徒の反応を見ます。

知ることが、考えるきっかけになる。
そして、試してみることで、自分の指導になっていく。

生徒の動きが変われば、伝え方の大切さを実感する。一方で、うまくいかない時には、まだ自分の理解が足りないと振り返る。知識を持つことで偉くなるのではなく、目の前の生徒をよりよく見るために使っています。

半年間の学びを終える時、篠田先生は「答えはその時々で変わってくる」と書かれました。すべてを知ったという結論ではなく、学んだからこそ新しい問いが生まれ、また考え続ける。その開かれた姿勢こそ、篠田先生の大きな専門性です。

事務局として何よりうれしく感じたのは、篠田先生が「学ぶ姿勢が良い空気感をまとい、その空気が生徒たちへ良い影響を与えてくれたら」と書いてくださったことです。
先生が学び、迷い、試し、また学ぶ姿は、生徒にも「今できなくても、考えながら変わっていける」というメッセージを届けているのだと思います。
経験を答えにして閉じず、次の問いへ開いていく。
A PLACE TO LEAVE FEELING LIGHTER

怪我なく踊り、スッキリして帰る。その場所を生徒とつくる

篠田典子先生のレポートを読み続けていると、指導の中心にいつも「生徒がどう受け取ったか」という問いがあることに気づきます。

この説明で伝わっただろうか。今日の身体の状態で無理はないだろうか。言い過ぎて考える力を奪っていないだろうか。反対に、伝えなければ怪我につながらないだろうか。厳しさが必要な場面と、支えるべき場面を、どのように見極めればよいのだろうか。

篠田先生は、簡単な一つの答えへまとめようとはされません。その日の生徒、その人の年齢、身体、経験、生活、気持ちを見て、今必要な言葉や方法を探します。

一番は、
「怪我なく踊って、スッキリして帰る」こと。篠田典子先生

スッキリして帰るという言葉には、ただ疲れを発散する以上の意味があるように感じます。自分の身体へ集中できたこと。できなかったことへ少し道筋が見えたこと。音楽に合わせて踊る楽しさを思い出したこと。教室で安心して言葉を交わせたこと。

そして、厳しい基礎へ丁寧に取り組みながらも、自分自身を否定せずに帰れること。

篠田先生は、ご自身が痛みや迷いを経験したからこそ、生徒を何もさせずに守るのではなく、身体と心を守りながら挑戦できる場所をつくろうとされています。

バレエが向いているかどうかだけで、その人の「好き」を終わらせない。年齢や目的が違っても、それぞれの人が自分の身体を知り、踊る喜びを感じられるように。普通ではないバレエの美しさを、日常のちょっとした所作や、生きていく時間の中にも持ち帰れるように。

篠田先生が生徒たちと育てているのは、形をそろえるだけのバレエではありません。感じること、考えること、伝えること、仲間とつくること、支えてくれる人へ感謝すること。そして、自分の「好き」を大切にしながら続ける力です。

これまで受け取ってきたバレエを大切にしながら、今を生きる生徒の身体と心へ、より安全で、より豊かな形にして手渡していく。その歩みに、事務局としてこれからも寄り添い、学びをご一緒できることを心からうれしく思います。

バレエ安全指導者資格®事務局

CERTIFIED TEACHERS MAP

バレエ安全指導者資格® 安全指導者MAP

各コースを修了された先生がいらっしゃる全国のスタジオを、お教室選びや相談先を探す際の参考にご覧いただけます。

※ピンをクリックすると、コースを修了された先生のお名前やスタジオが表示されます。

執筆:バレエ安全指導者資格®事務局

提出していただいた受講レポートをもとに、学び続ける先生方の歩みと、それぞれの指導に込められた願いをご紹介しています。

NEXT STEP

これまでの経験を大切にしながら、これからの指導を学ぶ

バレエ安全指導者資格®では、解剖学、整形外科学、栄養学、生体力学、心理、発達、音楽、歴史、哲学、美学、指導法を横断して学びます。先生が積み重ねてきた経験を否定するのではなく、新しい知識と結びつけ、生徒一人ひとりの身体と心へ、より丁寧に向き合える指導へ。

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