建部弘子先生|指導者の「想い」をシェアするコラム

痛みを、未来を守る知識へ|建部弘子先生【コラムVol.37】
バレエ安全指導者資格®コラム Vol.37

痛みを、
未来を守る知識へ建部 弘子先生|バレエスタジオFUCHSIA

二度の前十字靭帯断裂と、長いリハビリの日々。その経験を、建部弘子先生はただ過去の痛みとして終わらせませんでした。伝統ある教授法と現代の身体科学を学び続けながら、自分が味わった苦しさを、次の世代の安心へ変えていく。その指導の根にある、強くあたたかな想いをたどります。

読了目安:約11分執筆:バレエ安全指導者資格®事務局

「生徒のために、もっとできることはないだろうか」。バレエ安全指導者資格®を受講される先生方の振り返りには、いつもそんな想いがあふれています。技術を教えること。上達へ導くこと。そして何より、生徒一人ひとりの心と身体を大切に守ること。

大阪府泉大津市のバレエスタジオFUCHSIAで指導する建部弘子先生は、ご自身の怪我の経験を出発点に、安全な身体の使い方を学び続けてきました。痛みを知っているからこそ、痛みを当然にしない。憧れを大切にするからこそ、急がせない。建部先生のレッスンには、生徒の今日だけでなく、その先の人生まで見つめるまなざしがあります。

このシリーズでは、バレエ安全指導者資格®を修了された先生方の等身大の言葉とともに、それぞれの先生が大切にしている「バレエへの願い」をお届けしています。今回は、大阪府泉大津市で指導する建部弘子先生をご紹介します。
PAIN TRANSFORMED INTO CARE

痛みを乗り越え、安全な指導の体現者へ

建部先生の指導の根底には、「自分が味わったような苦しい思いを、これからの生徒たちにはさせたくない」という、強く、そしてあたたかな使命感があります。

先生ご自身、過去に二度の前十字靭帯断裂という大きな怪我を経験されました。思うように動けない身体への不安。踊りから離れざるを得ない悔しさ。そして、適切な処置が遅れたことで長引いた、つらいリハビリの日々。怪我は身体だけでなく、踊る人の心や生活にも深く影を落とします。

当時の指導現場に、現在ほど安全や怪我への知識が共有されていなかったことも、建部先生の中に大きな問いを残しました。痛みが出たとき、誰が気づくのか。どこまで休むのか。何を専門家へつなぐのか。そして、そもそも怪我を防ぐために、日々の指導で何ができるのか。

活動拠点
大阪府泉大津市
所属
バレエスタジオFUCHSIA
学びの軸
安全指導・身体科学・心理・美学
探究分野
チェケッティ・メソッド/チェアバレエ
「自分が味わった苦しさを、
これからの生徒には味わわせたくない」建部先生の学びを動かす原点

だから建部先生は、怪我を防ぐこと、痛みを見過ごさないこと、生徒の未来の身体まで見据えることを、指導の中心に置いています。解剖学、生理学、心理学などの新しい知識を学び、自分の経験だけを正解にせず、目の前の生徒によりよい方法を探し続けています。

ご自身の痛みを、生徒を怖がらせる話としてではなく、守るための知識へ変えていく。その姿そのものが、安全な指導とは何かを静かに示しています。

TRADITION MEETS MODERN SCIENCE

伝統あるメソッドと、最新の身体科学を重ねる

安全を求めることは、バレエの伝統を薄めることではありません。むしろ建部先生は、バレエが長い時間をかけて築いてきた知恵を深く理解し、現代の身体科学と結び直すことを大切にしています。

近年、本格的に学ばれているのがチェケッティ・メソッドです。長い歴史を持つ教授法でありながら、身体の使い方やレッスンの順序が緻密に組み立てられ、段階的に力を育てていく体系を持っています。

形を押しつけるのではなく、理由をたどる

「昔からこの形だから」と生徒の身体を無理に当てはめるのではなく、なぜその順序で学ぶのか、どの力を準備するための動きなのか、どうすれば負担を減らしながら近づけるのかを考える。

伝統の中にある論理を読み取り、解剖学や生体力学の視点から確かめることで、メソッドは生徒を縛る型ではなく、一人ひとりを導くための道筋になります。

骨格、柔軟性、筋力、成長の速さは、一人ひとり異なります。同じ言葉、同じ角度、同じ回数が、すべての生徒に同じように働くわけではありません。だからこそ建部先生は、生徒をよく観察し、伝統の原則を大切にしながらも、その子の身体に合う方法へ翻訳していきます。

最新の知識だけを追いかけるのでも、昔の方法をそのまま繰り返すのでもない。歴史ある教授法と、現在の身体理解。その両方に敬意を持ち、より安全で理にかなった指導へつなげていくところに、建部先生の誠実な探究があります。

GROWTH BEFORE HURRY

成長段階に合わせて、憧れを急がせない

子どもにとって、トウシューズは大きな憧れです。友だちが履き始めれば、自分も早く履きたいと思う。保護者も、早く始めることが上達につながるのではないかと期待することがあります。

けれど、トウシューズで立つことは、靴を用意すれば始められる技術ではありません。足部の成長、脚と体幹の筋力、姿勢を保つ力、正しくプリエやルルヴェを行えることなど、身体全体の準備が必要です。

「履きたい」という夢を守るために、
「今はまだ急がない」という選択がある。成長期の身体を未来まで守る指導

建部先生は、「周りが履いているから」「本人が望んでいるから」という空気だけで判断しません。その子の足や身体に必要な準備を見極め、プレトウシューズも活用しながら、立ち方や足の使い方を丁寧に確かめていきます。

それは、憧れを否定するためではありません。目先の達成より、その子がこの先も長く、安心して踊れることを優先するためです。

段階を踏むことは、遅れることではありません。
身体が理解し、力が育ち、安全に挑戦できる時期を待つことは、その子の可能性を小さくするのではなく、長く伸ばしていくための準備です。

建部先生のレッスンには、焦らせず、比べず、それでも成長を諦めない声かけがあります。無理をさせないことと、何も挑戦させないことは違います。安全な範囲で少しずつ可能性を広げ、できるようになる過程そのものを、生徒とともに大切にしていきます。

A PLACE TO GROW TOGETHER

バレエを通して、豊かな人間性を育む居場所

バレエスタジオFUCHSIAが大切にしているのは、技術の向上だけではありません。建部先生の言葉にあるのは、「上手い、下手よりも、まずはバレエが楽しいこと」という、シンプルで大切な願いです。

楽しいという言葉は、簡単さだけを意味しません。失敗しても安心してもう一度試せること。できない日にも、その場にいてよいと思えること。自分の成長を、誰かとの比較ではなく、自分自身の歩みとして感じられること。そうした土台があるからこそ、子どもは難しいことにも挑戦できます。

年齢を越えて、支え合うスタジオ

大きいクラスの生徒が、小さな子どもたちのお世話をする。年齢の違う生徒同士が自然に声をかけ合う。できたことを一緒に喜び、うまくいかない日も受け止め合う。

その縦と横のつながりの中で、子どもたちは振付やテクニックだけではなく、思いやり、協調性、自立心を少しずつ身につけていきます。

バレエという共通の言語を通して友情が生まれ、互いの違いを尊重できる。スタジオは、レッスンを受けるためだけの場所ではなく、生徒が安心して自分らしくいられる心の居場所にもなります。

安全とは、怪我がないことだけではありません。質問してもよいこと。失敗を笑われないこと。助けを求められること。自分の身体や気持ちを尊重してもらえること。建部先生の指導は、身体と心の両方にとって安全な環境を育てています。

BALLET THROUGHOUT LIFE

生涯を通じて、バレエを楽しむために

建部先生は大学で美学を専攻され、バレエの歴史や芸術的な背景にも深い関心を持たれています。踊ることの楽しさ、身体を動かす喜びだけでなく、作品が生まれた時代や、そこに込められた思想、舞台芸術としての豊かさまで、バレエには多くの入口があります。

技術だけを追いかけると、できるか、できないかがバレエの価値のすべてになってしまうことがあります。けれど、音楽を聴くこと、歴史を知ること、美しいものについて考えること、仲間と一緒に舞台をつくることもまた、バレエの大切な一部です。

さらに建部先生は、シニアの方や怪我を抱える方でも、その人に合った形で楽しめるチェアバレエの知識も取り入れています。立って踊ることだけを唯一の正解にせず、身体の状態に合わせてバレエと出会える道を増やしていく学びです。

バレエは、人生を彩るツールのひとつ。年齢や身体の状態を越えて広がる、建部先生のバレエ観

バレエを特別な人だけのものにしない。幼い子どもも、怪我から戻る人も、年齢を重ねた人も、それぞれの身体と目的に合った方法で、踊る喜びや芸術の豊かさに触れられるようにする。

建部先生の学びが安全指導、伝統的教授法、美学、チェアバレエへと広がっていくのは、知識を増やすこと自体が目的だからではありません。その先にいる誰かが、もう一度バレエを楽しめるようにするためです。

学びが広がるたびに、バレエへ続く入口も、また一つ増えていく。
FROM EXPERIENCE TO SAFETY

過去の経験を、未来の誰かの安心へ

お子さまを、心身ともに安心できる環境で育てたい。怪我を防ぎながら、長くバレエを楽しんでほしい。技術だけではなく、人としても豊かに成長してほしい。そんな願いを持つ保護者の方にとって、建部先生の存在は大きな支えになるはずです。

また、ご自身の身体をいたわりながら、無理なくバレエを続けたい大人の方にとっても、身体の状態を否定せず、その人に合う方法を一緒に探してくれるレッスンは、安心して一歩を踏み出せる場所になります。

二度の大きな怪我を経験したこと。適切な知識がない中で、長いリハビリを過ごしたこと。その記憶は消えるものではありません。けれど建部先生は、その痛みを、生徒の未来を守る学びと指導へ変え続けています。

自分の痛みを、生徒を守る知識へ。
過去の経験を、未来の安心へ。

伝統を尊重しながら、科学に学ぶこと。憧れを大切にしながら、成長を急がせないこと。上達を目指しながら、心の居場所を守ること。そして、年齢や身体の状態にかかわらず、バレエが人生を彩るものであり続けること。

大阪府泉大津市のバレエスタジオFUCHSIAには、知性とやさしさに支えられた、身体を大切にしながら心からバレエを楽しめる時間が流れています。

バレエ安全指導者資格®事務局

CERTIFIED TEACHERS MAP

バレエ安全指導者資格® 安全指導者MAP

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執筆:バレエ安全指導者資格®事務局

全国で学び続ける先生方の歩みと、バレエや生徒に向ける真摯な思いをご紹介しています。

NEXT STEP

生徒の未来を守れる先生へ

バレエ安全指導者資格®では、解剖学、栄養学、整形外科学、生体力学、心理、指導法などを多角的に学びます。経験だけに頼らず、目の前の生徒に合った、より安全で、より伝わる指導へ。

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